<社説>新成人へ贈る 自分を磨き、輝きを増そう


社会
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 コロナ禍での成人式を迎えた皆さん、不安もあったと思うが、晴れの日を迎えられた。おめでとう。

 改めて大人としての自覚と責任を感じながら、力強い一歩を踏み出すことを期待している。行動制限や自粛が重なり閉塞(へいそく)感が漂うといわれるが、若い力を生かし、未来を切り開く気概を見せてほしい。
 今年の新成人は全国で約124万人、沖縄では1万6千人余りいる。一方で離島の4市村が成人式を中止または延期し、残る自治体でも規模を縮小するなどして開催した。
 3密回避に気を使わねばならず、寂しい思いをした人もいたのではないか。久しぶりに会う友人と存分に語り合う時間が取れず、故郷に帰省できなかった人もいただろう。
 そうした厳しい状況の中でも離島や本島北部を中心に、年始に開かれた成人式でのあいさつを聞くと心強くなる。
 育ててくれた両親や地域の大人への感謝だけでなく、故郷への愛があふれていた。
 それぞれの夢や目標に向かい、努力することを誓う新成人もいた。
 新型コロナウイルスの感染が県内で初めて確認された昨年2月以降、一時的とはいえ職場や学校が閉じたり、制限されたりした。一部の自治体では要請に基づく飲食業の時短営業が今も続く。こうした厳しい状況が好転するかはいまだ見通せないが、自らの進むべき道を明確に語る新成人の言葉は頼もしく聞こえる。
 そして個人の目標とは別に、責任ある大人として、また社会の一員として、これからの未来をどう築くかも考えてほしい。
 新成人の多くが生まれた2000年は20世紀最後の年であった。「戦争の世紀」といわれた20世紀は第1次、第2次の世界大戦があり、その後に続く冷戦、やむことなき地域紛争があった。
 同時に科学技術が発展し、人々の生活を劇的に変えた側面もあった。20世紀末に普及したインターネットなどの通信技術が代表だろう。
 歴史に学ぶならば、21世紀は争いがなく、革新的な技術を活用し、人々が手を取り合う社会を築く責任があった。
 新成人が生きてきた21世紀の20年間はどうだっただろうか。紛争の火種はくすぶり、経済的格差は覆いようもなく広がる。
 沖縄に目を向けても、いまだ続く基地負担や子どもの貧困など課題が山積する。
 よりよい社会を築き、未来の世代に引き継ぐのは大人の責任だ。成人式の節目に、改めて社会的責任についても考える機会としてほしい。
 「玉磨かざれば光なし」。中国の故事に由来する言葉だ。いかに優れた人でも努力を怠れば輝くことはない。一人一人が自らの才能を伸ばし、その集合知を社会のために生かしてもらいたい。
 閉塞感を打破するのに、若い力に頼るところは大きい。ぜひ力を発揮してほしい。