<社説>米軍の低空飛行訓練 国民の命を軽視している

 米軍機の低空飛行訓練が年末年始に渡嘉敷村や座間味村で相次ぎ、地元住民から不安や怒りの声が上がっている。

 両村周辺は米軍の訓練空域・水域外だ。それにもかかわらず、岸信夫防衛相は「日米安保条約の目的達成のための重要な訓練だ」と述べ、訓練を容認する考えを示した。
 墜落や部品落下の危険性や激しい騒音が伴う飛行訓練を、民間地上空などでも自由に実施できると認める姿勢は国民の生命や人権、財産を軽視するものだ。訓練に歯止めがかけられるよう日米地位協定を改定するか、訓練を規制する制度を設けるなどして米側に守らせるべきだ。
 今回の訓練は大きな問題が主に二つある。
 一つは低空飛行だ。日本政府は米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備した際、安全策として最低安全高度を約150メートル以上と県民に説明したが、それを下回って飛行する場合もあると例外を設けた。米軍は運用上、約60メートルでの飛行もあり得ると明らかにしている。
 実際、県外でも低空飛行が相次いでおり、当該自治体は反発している。全国知事会は米軍機の飛行について高度や騒音に国内法を原則適用することを求めている。
 日本の航空法施行規則によると、最低安全高度とは、エンジンが停止した際に地上や水上の人や物に危険を及ぼすことなく着陸できる高度のことだ。人家密集地域で最も高い障害物から300メートル、水上などでは水面から150メートルなどと定めている。
 今回の低空飛行の動画には米軍機とほぼ同じ高さに「海抜約44メートル」と書かれた標識が映っていた。目撃した住民が危険を感じる高度であり、国内法に照らしても異常だ。ところが日本政府は動画があっても調査せず「日米間の関係合意や規則に基づき行われた」とする米軍の説明をうのみにし、訓練を追認した。
 もう一つの問題は、訓練区域外での飛行であることだ。日本政府は1979年の国会答弁で、米軍提供施設・区域外では「(日米地位)協定の予想しないところ」という見解を示した。83年に外務省が作成した機密文書「日米地位協定の考え方・増補版」でも施設・区域外で実施できる活動もあるとしつつ「あくまでも例外的なもの」で「歯止めなく広がることは阻止する必要がある」と記している。
 外務省が懸念した状況は今、現実となった。米軍は「例外」を拡大解釈し、日本政府はそれを追認している。
 米軍が駐留するイタリアでは低空飛行訓練を原則禁止し、国内法の順守を義務付ける協定を米側と結んでいる。低空飛行の追認は海外から見ても異常である。空の主権を米国に差し出すことに等しいからだ。それを異常と捉えない日本政府の態度は許しがたい。対米従属姿勢を改めない限り、国民の命や人権、財産を守ることはできない。



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