<社説>政府の新型コロナ対策 国民守る抜本策を立てよ


社会
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 未曽有のコロナ禍の中で、この国のリーダーは国民を守るため何をなすべきかを見失っているのではないか。不審や不満が膨らむばかりだ。

 新型コロナウイルス感染拡大で1都3県を対象に緊急事態宣言を再発令した菅義偉首相や政府への批判が高まっている。決断が遅く、対応が後手に回ったというものだ。地域限定の措置がどれほどの感染抑止効果を持つかも現時点では不透明だ。
 共同通信が9、10の両日に実施した全国電話世論調査によると菅内閣の支持率は41.3%で不支持率42.8%を下回った。緊急事態宣言再発令のタイミングは「遅過ぎた」との回答は79.2%。政府のコロナ対応を「評価しない」が68.3%に上った。
 世論調査の結果は菅首相の指導力の欠如や政府の機能不全に対する国民の憤りをダイレクトに反映していると言っていい。コロナ禍の中で命や暮らしを守ることができるのか、国民は不安や不満を抱いている。菅首相のリーダーシップが待たれている。
 国民の不安の根本原因は、政府の対応が「遅すぎる」ことと「的外れ」であることに尽きる。この二つは連関し合い、国民を混乱させている。
 対応の遅さで言えば、「GoToトラベル」の全国一律休止の判断が12月14日までずれ込んだことが挙げられよう。「GoToトラベル」が感染拡大を助長したとの指摘に対し、政府は「主要な原因とする証拠はない」と事業継続に固執した。対応遅れが「第3波」の爆発的な感染拡大を招いたのではないか。
 1都3県の緊急事態宣言も都県側の強い要請に応じたもので、決断は遅きに失した。13日に再発令される見通しとなった京都、大阪、兵庫の関西3府県の緊急事態宣言も医療の逼迫(ひっぱく)状況に危機感を抱いた府県側の早急な決断を促す声を受けたものであった。数日の判断遅れが感染抑止に大きな影響を与えかねないことを政府は認識しているのか疑問を拭えない。
 的外れで言えば、本年度第3次補正予算案に「GoToトラベル」の費用1兆311億円を盛り込んだことが象徴している。この事業がいつ再開できるか見通しは立っていない。これだけの費用があれば逼迫する医療現場の下支えや困窮する事業者の救済に充てるべきではないか。「新型コロナウイルス禍のお金の使い方を間違えている」という野党の批判は当然だ。
 11カ国・地域との間で合意しているビジネス関係者との往来について政府は継続する方向で調整しているが、それでいいのか。警戒が高まっているウイルス変異種が日本国内に拡大してからでは遅い。
 コロナ禍はもうすぐ1年を迎えようとしているが、政府の対応は迷走続きであった。国民の不信感を払拭し、命と暮らしを守るためも抜本的なコロナ対策を早急に立て、実行しなければならない。