<社説>吉川元農相起訴 「1強」の腐敗解明せよ

 「族議員」と業界団体の癒着という、旧態依然の汚職構造が今も生きていることにあ然とするしかない。

 自民党衆院議員だった吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された。農相在任中に、広島県の大手鶏卵会社「アキタフーズ」前代表から現金500万円を3回に分けて受け取ったとされる。
 吉川元農相は「大臣の就任祝いだと思った」などと賄賂性を否定しているが、大臣が業界団体の代表から大臣室で現金を受け取ること自体、政治の劣化を示している。
 捜査では安倍政権の内閣官房参与を務めた西川公也元農相も元代表から現金を受け取ったとされる。規制緩和や補助金を求めて政治力に依存する関係が農水行政をゆがめた可能性が高い。公判で全容を解明するとともに、菅義偉首相や自民党が積極的に事実関係を明らかにしなければならない。
 起訴状によると、吉川氏は農相時、家畜を快適な環境で飼育する国際基準案に政府として反対するよう依頼され、3回にわたって現金を受け取った。最初の200万円の授受は吉川氏が国会で国際基準案について答弁した当日で、農水省はその後、国際機関に反論書を出した。事実であればあまりにもあからさまな贈賄だ。東京地検特捜部は贈られた現金には、この対応の謝礼や、日本政策金融公庫から中小鶏卵業者への融資に便宜を図る依頼も含まれるとしている。
 吉川氏はこれ以外にも元代表から5年間で計1300万円を受け取ったという。ただ、職務権限がない時期だったため立件は見送られた。吉川氏本人は疑惑発覚後、病気を理由に衆院議員を辞職した。その後も公の場で事件について説明していない。政治家としての説明責任も果たしていない。国会招致が必要だ。
 自民党の「政治とカネ」の問題はこの1件だけではない。
 19年12月、統合型リゾート施設(IR)事業の汚職事件で、所管する内閣府副大臣だった秋元司衆院議員が、20年夏には河井克行元法相夫妻が参院選広島選挙区の買収事件で逮捕起訴された。
 わずか約1年の間に安倍政権の大臣、副大臣経験者3人を含む4人の政治家が立件されたことになる。「桜を見る会」の夕食会費を巡っては安倍晋三前首相の元公設第1秘書が罰金刑を受けた。7年8カ月に及んだ安倍「1強」政権の裏で、政治が著しく腐敗していたと言わざるを得ない。
 安倍首相の片腕として官房長官を務めた菅義偉首相も責任は重い。しかし菅首相は吉川氏起訴に「大変残念」とは述べたものの、「政治とカネ」の問題に積極的に踏み込む姿勢は見せていない。
 政権への疑念が強まる中では、コロナ対応など政府の施策に国民の信頼が得られない。菅首相は襟を正し、全容解明を通じて国民の信頼回復を図るべきだ。



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