<社説>宮古島市長に座喜味氏 玉城県政の姿勢問われる


社会
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 17日に投開票された宮古島市長選で新人の座喜味一幸氏が、現職の下地敏彦氏を破り、初当選した。座喜味氏は、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力から支援を受けたのに対し、下地氏は国政与党の自民、公明が後押しした。

 今回の宮古島市長選は、市政の継続か刷新かが問われただけではない。「オール沖縄」、自公の両勢力ともに来年の県知事選に向けた前哨戦の初戦と位置付けて全力で臨んだ。いわば今後の選挙戦や政局を占う重要な選挙だった。
 座喜味氏が勝利したことで、「オール沖縄」勢にとっては、2月の浦添市長選、4月のうるま市長選に加え、秋までに実施される衆院選に弾みを付けた形だ。「オール沖縄」がこれらの選挙で勝利できるかどうかは、玉城知事の県政運営の成否が鍵を握っている。県民から評価を得られる政治姿勢やかじ取りが問われる。
 「オール沖縄」対自公による全面対決となった宮古島市長選は、県政や国政の評価も関わる県対国の側面もあった。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り対立する両者にとって落とせない選挙だった。このため座喜味、下地両氏の選挙戦は、県と国の代理戦の様相を帯びていた。
 国政与党の自公勢は、経済団体など組織戦を展開した。菅義偉首相は秘書官を投入するほど力を注いだ。県内外の国会議員も市内に入り、「国とのパイプ」をアピールした。
 一方、「オール沖縄」勢力は保革共闘態勢を築いた。宮古島が強固な保守地盤であることを念頭に、街頭演説やマスコミ対応など「顔が出る」運動は「オール沖縄」が担い、一部保守は水面下で現職候補の保守票取り込みに奔走した。
 その結果、座喜味氏が勝利したことで、「オール沖縄」にとっては衆院沖縄4区の一角である宮古島市に基盤を築いたことになる。一方、敗れた自公にとっては、玉城県政と距離を置く首長でつくる「チーム沖縄」の会長を下地氏が務めているだけに痛手となった。今後の選挙に向けて態勢の立て直しが急務となる。
 自民党への復党を目指し、衆院沖縄1区から出馬する意向を示している無所属の下地幹郎衆院議員が現職を支援したものの、当選させられなかったことも、政局に影響しそうだ。下地氏は浦添、うるまの両市長選でも自公と協力する見通しだ。
 今年最大の政局は、衆院選である。県内では、沖縄2区に位置する浦添市、3区に含まれるうるま市の両市長選の結果が衆院選の情勢に直結する。いずれも事実上の一騎打ちとなる見通しで、自公勢力と、玉城知事を支える勢力による全面対決となる。
 ただ今年は例年と異なり、国政、県政いずれも新型コロナウイルス対策が最大の政治課題である。その結果が政権への評価となり投票行動に影響し、政局を左右する。政治家の手腕の真価が試される。