<社説>バイデン大統領就任 沖縄政策を変更させよう


社会
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 米国のジョー・バイデン氏が20日(日本時間21日未明)、第46代大統領に就任した。

 4年間のトランプ政権で拡大した社会の分断を修復し、「米国第一」主義から国際協調路線へ転換する。しかし、連邦議会議事堂襲撃に見るように政治対立の根は深い。新型コロナウイルス対策、対中政策など課題は山積する。
 沖縄から見ると、新政権発足後も名護市辺野古の新基地建設問題をはじめ基地の整理・縮小は進まないという見方が有力だ。玉城デニー知事はあらゆるネットワークを駆使し対沖縄政策を変更させるよう強力に取り組むべきだ。
 米軍基地の過重負担に悩まされてきた沖縄の現状は、米大統領の交代によって大きく変わらなかった。例外は、1962年のケネディ政権の沖縄新政策かもしれない。
 民主党のケネディ氏は、沖縄が日本の領土であると公式に認め、住民が求める自治権を拡大した。援助について日米が協力する方向性を打ち出し、沖縄返還につながる重要な一歩を踏み出した。
 最近の2人の民主党大統領のうち、クリントン氏は2000年の沖縄サミットで「沖縄におけるわれわれの足跡を減らす(reduce our footprint)ため、できるだけの努力をする」と約束した。しかし、その目玉だった米軍普天間飛行場の返還は名護市辺野古の新基地建設へとすり替わり、米軍の「足跡」は減らなかった。
 オバマ大統領も、県民の強い反対にもかかわらず、辺野古の新基地建設を断念しなかった。今回、共和党から民主党政権になる。
 トランプ氏が進めた対中強硬路線は、民主党政権に代わっても基本的に踏襲されるとみられる。そうなると日本に安全保障上の分担を求め、沖縄の基地負担は強化される。
 実際、日本政府は米国との軍事一体化を進め、先島へ自衛隊を配備するなど南西諸島の防衛を強化している。日米による沖縄の基地機能強化は、有事の際に沖縄が標的にされることを意味する。
 こうした状況下で、玉城デニー知事が求めている日米両政府と県の3者による協議機関「SACWO(サコワ)」の設置は、重要な意味を帯びてくる。基地負担を強いられる沖縄が日米の安全保障協議に当事者として加わる。当然の要求だ。
 バイデン新政権で、人権をより重視する民主党プログレッシブ(進歩派)が発言力を強めている。基地問題で人権がないがしろにされている沖縄側の訴えが、プログレッシブを通じて政権中枢に伝わりやすくなるかもしれない。
 玉城知事は訪米によって新政権に米軍基地問題の解決を訴える姿勢を示している。県人ネットワークなどを活用し、米国の人権団体や市民運動と連携してプログレッシブとつながってほしい。その結果、ケネディ新政策に匹敵する変化を期待したい。