<社説>コロナ関連法改正案 まだ懸念は払拭できない

 私権の制限を盛り込んだ法改正案であり、国民の不安を払拭(ふっしょく)するような丁寧な説明が求められるはずだ。しかし、政府にその自覚があるとは思えない。これでは国民の懸念は膨らむばかりではないか。

 新型コロナ対策特措法と感染症法の改正案の審議が国会で始まった。法案にある事業者や患者に対する懲罰や過料が審議の焦点だ。
 緊急事態宣言を発し、事業者に営業時間の短縮を求めることは、新型コロナウイルス感染症を抑止する上で効果があろう。しかし、過料などの強制力がコロナ禍収束にどれほどの効果があるのか不明確だ。患者への懲役刑は人権上許されない。
 25日の衆院予算委員会で、感染症法改正案に盛り込まれた入院拒否者への懲役刑導入に関し、菅義偉首相は「感染者が医療機関から無断で抜け出した事案や、罰則を求める全国知事会の緊急提言を踏まえ、実効性を高めるために罰則を設けたい」と答弁した。
 そうであるならば感染者が医療機関を抜け出し、他人に害を及ぼすような事例がどれほどあるのか審議の場で明確に示すべきだ。
 与党は入院拒否者に対する懲役刑を削除する方向で検討に入った。営業時間短縮の命令を拒んだ事業者への過料についても減額を視野に入れるという。当然であろう。入院したくても入院できす自宅待機を強いられている患者や経営難にあえぐ事業者の立場を考えれば、懲役刑や過大な過料を課すべきでない。
 他にも気になることがある。新型コロナ対策特措法に盛り込む「まん延防止等重点措置」の扱いである。緊急事態宣言の前段階に当たるまん延防止等重点措置に関して、野党は指定要件の曖昧さや国会への事前報告義務がないことを批判している。
 仮に野党が求める国会への事前報告が認められたとしても、公平で誰もが納得できる運用ができるのか疑問が残る。事業者に営業時間短縮を求め、それに従わなければ過料を科すという罰則規定がある以上、国会における慎重な審議を踏まえた上でまん延防止等重点措置を発動すべきだ。
 与野党は26日に始まった両法改正案の修正協議は、入院拒否者への罰則規定や営業時間短縮命令を拒んだ事業者への過料など5項目について議題とする。コロナ禍を防ぐための法改正案ではあるが可決成立を急いでは禍根を残す。コロナ禍にあえぐ国民や事業者の苦境を踏まえ、修正には柔軟に対処してほしい。
 ワクチン接種で政府がマイナンバーの活用を検討していることも気がかりだ。河野太郎行政改革担当相は「接種の業務そのものにマイナンバーカードは必要ない」と答弁している。ではなぜ活用にこだわるのか。マイナンバーによる国民監視や情報流出が懸念される中では拙速だ。慎重に対応すべきだ。



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