<社説>コロナ法案修正協議 根本の問題は解消されず

 新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正を巡り、自民、立憲民主両党は28日の幹事長会談で、入院拒否者らへの刑事罰を削除することなどで改正法案の修正に合意した。

 立場の弱い人や事業者ばかりを罰則の対象とし、法で威嚇して行政に従わせる構造が今回の法改正の根本的な問題点だ。修正によって問題点は解消されていない。このためコロナ対策としての実効性は大いに疑問である。
 最優先すべきは、全ての人に入院や疫学検査を提供できる検査・医療体制の整備である。緊急事態宣言の前に、国会に報告するだけで広範な権限を知事に与えるなど、国民の人権制約を正当化する法改正は見送るべきだ。
 コロナ特措法には、事業者への営業補償の規定がなく、営業自粛に安心して協力するのが難しいといった問題点があった。その欠陥を補うための改正であれば理解できるが、罰則を設けて強制的に対策に従わせるというのが今回の内容だ。私権の制限という危険性を伴い、罰則の程度を修正して済む話ではない。
 感染者に対して刑罰を設けるのは人権の侵害を招き、感染者に対する差別や偏見を助長する恐れが強かった。刑事罰の削除は当然だ。しかし、修正案は懲役刑を削除するが、罰金に代えて、行政罰である過料を科すことを残した。修正の効果に疑問を覚える。
 そもそも入院拒否の問題よりも、入院したくても受け入れ病床が足りず、自宅で亡くなってしまう事態の方が深刻だ。医療体制を巡る政府の無策を棚上げして罰則強化を急ぐなど後先が逆だ。
 感染者は安全な環境で治療を望むのであり、入院を拒否するのはのっぴきならない事情があるからだ。そうした事情に耳を傾けず罰を科すだけでは、感染を名乗り出ることはできない。感染者を見えなくするだけで、逆効果だ。
 営業時間短縮命令に従わない事業者に科す過料については、当初案から金額を引き下げることで修正合意した。とはいえ、休業できないほど経営的に追い込まれる事業者にいかに感染対策に協力してもらうかという、根本の問題が解消されたわけではない。
 営業補償を設けずに過料を科すことは財産権侵害の恐れがある。憲法29条の3項は「私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」とある。コロナ対策という公共の福祉のために営業の自由を制約するならば、改正特措法に損失への補償も同時に明記しなければ憲法違反になる。
 国民に不自由を強いる緊急事態宣言の発令下に、自民党の松本純国対委員長代理、公明党の遠山清彦幹事長代理が深夜、時短に応じていない銀座のクラブ入店が明らかになった。自らを律することができない政治家に、私権を制限する法改正を審議する資格などない。



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