<社説>森氏の女性蔑視発言 組織委会長を辞任せよ


社会
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 男女平等というオリンピック精神をないがしろにする差別的な発言は看過できない。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会に出席し、JOCが女性理事を増やしていく方針を掲げていることに関連して「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した。
 批判を浴びて発言を撤回して謝罪したが、それでは済まされない。森氏に大会運営の責任者の資格はない。ただちに会長を辞任すべきだ。
 オリンピックの精神は「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治」など、いかなる種類の差別も受けないことである。
 JOCや国際オリンピック委員会(IOC)は男女平等を掲げている。IOCは男女混合種目を増やしており、東京五輪は出場選手に占める女子の比率が過去最高を更新し、5割に迫る見通しだ。森発言はこうした取り組みを台無しにするものだ。
 世界のアスリートたちは、女性を蔑視するような人物が責任者を務める祭典に参加したいと思うだろうか。森氏には「アスリート・ファースト」という視点が欠落している。
 3日の臨時評議員会で森氏は、自身がかつて会長を務めた日本ラグビー協会で議事進行に時間がかかったと指摘。「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」と語った。さらに「『女性を増やす場合は発言時間の規制を促しておかないとなかなか終わらないので困る』と(誰かが)言っておられた」とも語っている。
 JOCは、女性理事を40%以上とする目標を掲げる。現在、JOCの理事は25人で、うち女性は5人。目標の半分にすぎない。
 女性理事の発言時間を制限するような森発言に見られるように、男性中心で多様性を排した発想が女性登用を妨げているのではないか。森氏の発言に異論が出なかったことも組織として問題だ。
 森氏の不適切な発言は、今に始まったことではない。自民党幹事長時代に「沖縄は学校で君が代を教わっていなかった。教組は全く共産党が支配し、沖縄の先生も琉球新報、沖縄タイムスもそうです。だから何でも政府に反対、国に反対です」(2000年3月)と発言し物議をかもした。
 小渕恵三首相(当時)が病気で倒れたとき、選挙ではなく党幹部による「密室協議」で首相の座に就く。在任中「日本は天皇中心の神の国」と発言したり、2000年の総選挙終盤に「無党派層は寝ていてほしい」と発言したりして、首相としての資質が問われた。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、森氏に辞任を迫ることで自浄作用を働かせ、オリンピックの精神を共有していることを内外に示してもらいたい。