<社説>米、パリ協定復帰 脱炭素へ技術革新進めよ

 地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に米国が正式復帰した。気候変動対策の加速を明言するバイデン米大統領の下、国際協調による「脱炭素」への取り組みが進展することが期待される。

 二酸化炭素(CO2)排出量世界2位の米国が削減目標を主導することで、日本をはじめ各国の対応もこれまで以上に意欲的になるだろう。
 脱炭素社会を実現するためには既存技術の高度化やさらなる技術開発が求められる。
 日本が世界で優位に立つ燃料電池車は、水素と空気中の酸素の反応で電気をつくる。水しか排出しない「究極のエコカー」だ。規制緩和で水素供給網整備が進みつつあり、かみ合っている官民の歯車を止めてはならない。
 一方で技術的に確立していない蓄電池の高効率化やCO2の回収・再利用など取り組むべき課題は多い。日本も米国とともに脱炭素技術への投資や開発に力を注ぐべきだ。
 協定復帰に当たりバイデン氏は温室効果ガス主要排出国による会合を控え各国に「野心的な行動」を促した。米国は電気自動車の普及などに4年間で約211兆円を投資する方針を示している。米国だけでなくイギリスやフランスは2030~40年までにガソリン車、ディーゼル車を新規販売しない目標を掲げた。中国も35年までのガソリン車販売禁止を目指す。
 一方で日本は経済産業省が30年代半ばにガソリン車販売をゼロにする方向を打ち出しているが、部品数がガソリン車より1万点近く減る電気自動車に置き換われば、関連産業の1割に当たる30万人が職を失うとの試算がある。
 国際競争力を維持するには自動車メーカーの開発を支援する税制優遇などの政策が必要となる。同時に雇用を維持するためにも再生エネルギーをはじめとした新電力への移行を進めなければならない。
 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、従来型の化石燃料発電に比べ、再生可能エネルギーへの投資は雇用効果が3倍あり、温室効果ガスゼロを目標とする50年までに世界で4200万人の雇用を生み出すという。
 日本国内で老朽化し、安全性に懸念がある原子力発電所を延命させるより、再生エネルギーに切り替えたほうが雇用と電力供給の安定性を確保することにつながる。
 電力供給に関しては離島県の沖縄、中でも小規模離島は発電設備の規模が小さく再生エネルギーでは不安定な部分がある。新技術の実用化は不可欠なものだ。
 県と沖縄電力の実証実験では、波照間島で風力によるモーター発電機と蓄電池を使い連続100時間の給電を実現した。脱炭素社会への挑戦は、地球規模の課題解決だけでなく県民の身近な生活環境を改善することにもつながる。
 脱炭素は止められない世界の潮流だ。日本もこの流れをさらに加速させるべきだ。


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