<社説>女性議員産休明記 議会の多様性を高めよう


社会
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 ジェンダー・ギャップ指数で世界153カ国中121位と下位に甘んじる日本で、ようやく議員の産休取得に道が開けた。

 全国の都道府県議長会、市議会議長会、町村議長会が議会運営の基準となる標準規則を改正し、産休期間を初めて明記したからだ。
 全国の議会に同様の改正が広がると期待されている。出産と議会活動の両立を促す環境整備によって、女性を含めた議会の多様性をさらに高める契機としてもらいたい。
 3議長会が改正した標準規則は産休期間を「産前6週、産後8週」とした。育児や介護での議会欠席も盛り込まれた。拘束力はないものの、全国の議会が規則を定める際の参考となる。
 従来は出産による議会の欠席は認めるが、産休期間は明記されていなかった。育児や介護でも議会を休めず、子育て世代が政治参画をためらう要因の一つになっていた。
 橋本聖子参院議員の妊娠をきっかけに衆参両院、全国都道府県議長会は欠席事由に出産を加えるなどの改正をしてきた。しかし地方議会では同僚議員らの理解が得られず、産後3日目で議場に復帰した女性議員もいたという。
 労働基準法に産休の規定があるのは、母体を保護するという目的からだ。全ての人に認められた権利である。
 雇用関係がない議員だからといって、産休取得期間が曖昧だった従来の議会規則は、法の理念に反するといえる。
 福祉先進国とされる北欧のノルウェー、スウェーデン、デンマークでは、いずれも国会議員に出産・育児休業制度があり、スウェーデンでは最大450日の出産・育児休業が認められる。ニュージーランドのアーダン首相は18年、6週間の産休を取得後、公務に復帰した。
 日本での環境整備は緒についたばかりだが、政府は「男性版育休」の取得を義務付ける育児・介護休業法の改正案を閣議決定した。女性議員だけでなく全ての議員が議会活動と育児、介護などを両立できるようにしてもらいたい。
 同時に産休中の議員が意見表明する機会を確保する制度設計も各議会で議論してもらいたい。
 18年の国会改革で産休中の女性議員の投票方法が論点に浮上した。衆院法制局が意見を聞いた大学教授7人中、条件を満たせば議場にいなくても出席とみなす容認派が4人いたという。
 情報通信技術の発達で、電子投票など意思を示す手法は幾つもある。厳格な要件は当然として、産休・育休中だからといって議員の権利が奪われることがあってはならない。
 県内では13年に初当選した北谷町の宮里歩町議が17年に産休を取得した例もある。
 北谷町をはじめ、いずれの議会でも改革論議は道半ばだが、「誰もが政治に参加できる社会」を実現するための議論を期待したい。