<社説>山田広報官辞職 疑惑は残されたままだ

 これで幕引きとはならない。総務省に対する接待攻勢の裏に何があったのか疑惑は残されたままだ。

 放送事業会社・東北新社に勤める菅義偉首相の長男正剛氏側からの高額接待を批判された山田真貴子内閣広報官が辞職した。体調不良が辞職の理由だが、事実上の引責辞任である。それでも高額接待の責任を取ったとは言えない。
 接待問題で総務省は幹部ら9人を減給や戒告の懲戒処分にするなど11人を処分した。ところが、武田良太総務相は処分対象者のほとんどを現職に留め置くなど身内に甘い処分だった。
 菅首相が広報官に抜てきした山田氏への対応も誤った。山田氏が辞任する用意があると伝達していたのに官邸は続投で乗り切れると判断した。首相の任命責任が問われる事態を避けたかったのだろう。官邸側の保身によって対応は後手に回り、傷口を広げた。
 今後、東北新社の接待攻勢が何を目的としたものなのか、放送行政がゆがめられなかったかが明らかにされなければならない。
 東北新社と総務省幹部らの会食は2016年7月から20年12月にかけ延べ39件行われた。この間の東北新社に関する許認可への影響の有無について具体的に調査し、解明すべきだ。内部調査で明らかにならなければ、第三者機関による調査も必要である。
 菅正剛氏の存在や果たした役割についても明らかにするべきだ。菅首相が総務相時代、正剛氏は秘書官を務めていた。その後の東北新社への就職は「天下り」と見られても仕方ない。一連の問題で菅首相は「私と長男は別人格」と抗弁したが、ほとんど説得力を持たない。首相は接待問題について自らの言葉で明らかにすべきだ。
 菅首相は総務相時代、自身の政策に異議を唱えた課長を更迭した過去がある。今も総務省に対し影響力を及ぼしているみられている。強権を誇る首相と忖度(そんたく)する官僚という構図が問題の背景にある。
 昨年9月に菅政権が発足して以来、疑惑や不祥事が次々と判明した。ところが菅首相は疑惑を明らかにし、国民の信を取り戻そうという姿勢からほど遠い。
 「桜を見る会」の前夜祭会場だったホテル側が作成した明細書が明らかになり問題が再燃したが、菅首相は再調査を拒んだ。吉川貴盛元農相が在任中、広島県の大手鶏卵会社前代表から現金を受領し、収賄罪で在宅起訴された問題でも菅首相は「大変残念」と述べるだけで実態解明には踏み込まなかった。
 山田氏の問題でも菅首相は先月26日、緊急事態宣言一部解除を受けた会見を開かず「山田氏隠し」と批判された。
 菅首相の態度は責任回避に終始するものであり、国民の不審は高まるばかりだ。今回も山田氏辞職で済む話ではない。説明責任を果たすべきは菅首相である。



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