<社説>ミャンマーデモ弾圧 暴力停止へ各国が結束を


社会
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 国連のブルゲナー事務総長特使は、ミャンマー国軍のクーデターに対する抗議デモを巡り、治安部隊による弾圧で3日に計38人の死者が出たことを明らかにした。1日の犠牲者数として最多だ。非暴力の抵抗を武力で弾圧する暴挙は認められない。

 国軍は文民政権転覆の正当性をアピールするが、反軍政デモの拡大により経済や政府機関の一部がまひし、統治能力の欠如は明らかだ。軍部の暴走で、これ以上の犠牲者を出すことがあってはいけない。国際社会が一致してミャンマー国軍への圧力を強め、アウン・サン・スー・チー氏の解放へと一刻も早く方針転換させなければならない。
 2月1日のクーデターから1カ月余りが過ぎた。昨年11月の総選挙で大敗した軍部は、スー・チー氏が率いる与党・国民民主連盟(NLD)幹部を一斉に拘束した。無線機の違法輸入容疑などで訴追されたスー・チー氏は、社会の不安をあおる情報を流布したなどとして新たに訴追され、拘束が長期化しそうだ。
 これに対する抗議デモは日を追って大規模化し、2月22日に全土で実施されたゼネストは数百万人が参加した。軍事政権下で国際社会から取り残された暗黒の時代に戻すまいと立ち上がる人々や、新しい民主主義の時代に育った若者たちが、独裁への抵抗を示す3本指を掲げてスー・チー氏の解放を叫んでいる。
 自由と民主主義を求めて燎(りょう)原(げん)の火のごとく広がるミャンマー国民の抵抗は、弾圧に屈することはないだろう。しかし、2月28日にも治安当局の銃撃で18人が死亡し、クーデター後の拘束者は約1200人に上るとされる。現在、デモ参加者に発砲しているのは警察だが、軍が直接乗り出す事態も危惧(きぐ)される。弾圧を早急に止めなければならない。
 ミャンマー国民は、国連をはじめ国際社会による軍政包囲網に期待を託している。ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使は「国軍の戦争犯罪や人道に対する罪を容認すべきではない」と呼び掛けた。国軍は国連大使の解任を発表したが、米国などはチョー・モー・トゥン氏を正統な大使だと支持している。
 一方で、ミャンマーを自国のエネルギー戦略の要衝と位置付ける中国は、国軍への非難を一貫して避けてきた。このため国連安全保障理事会は、スー・チー氏の解放に役割を果たせていない。ミャンマーの政情安定のために国際社会が歩み寄るべきだ。
 中でも、歴史的に国軍とも独自のパイプを持つ日本の役割は重要だ。国際社会から厳しい目を向けられて孤立している状況を、あらゆる手段を通じて国軍側に認識させ、スー・チー氏の拘束や国民に対する実力行使を直ちに改めさせることだ。
 多くの日本人がミャンマーの民主主義の行方に関心を持ち続けることも、軍政の暴力を監視する力になる。