<社説>東日本大震災10年(1) 日頃から防災対策意識を


社会
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 災害に備えた体制の整備はまだ道半ばである。東日本大震災から11日で10年を迎えるのを前に、いま一度、足元から防災対策を点検したい。

 共同通信のアンケートでは、全国市区町村の20・5%は防災の仕事に専従する職員が存在しないことが判明した。県内でも7町村で存在しなかった。地域が抱える災害リスクを踏まえて社会・経済機能の維持を目指す「国土強靱化地域計画」の策定も全国で進んでいない。
 国や自治体での対策をはじめ、個々人が日頃から家庭で災害への備えを意識し、こまめに準備することが求められる。それが大震災が残した最大の教訓だ。
 「地震列島」と言われる日本の中で沖縄は地震が少ないイメージを抱く県民は多いかもしれない。しかし、2020年における都道府県別の震度1以上の地震回数は全国13位だった。防災科学技術研究所による2019年の予測では、今後30年間で震度6強以上の揺れに見舞われる確率は、沖縄地方の沿岸部を中心に6~26%だという。
 沖縄が、いつ巨大地震や津波に襲われてもおかしくない。実際、南西諸島の太平洋側に位置する琉球海溝のほか、沖縄トラフ、活断層の動きにより地震が起きている。
 1771年に石垣島近海で発生したマグニチュード7・4の揺れを観測した地震では、大津波が八重山、宮古地域を襲い、約1万2千人が犠牲になった。家屋流出は2千棟とされる「明和の大津波」である。津波は石垣島で最大30メートルに達し、多良間島から宮古島では10メートルだったとされる。
 このことからも、私たち沖縄県民は東日本大震災は我が事と捉えなければならない。しかし、災害対策が不十分であることが、各種の調査で明らかになっている。
 共同通信の調査によると、複数の避難場所を確保するなど学校防災の水準を県内で達成しているのは8市町村にとどまる。日本防災士機構のまとめでは、災害時の避難や救助などについて知識と技能を持つ民間資格「防災士」の数は沖縄は882人にとどまり、全国最少だ。
 高齢者や障がい者ら災害弱者をどう救助するかも日頃の対策が重要となる。どこにどのような弱者がいるかを普段から把握し、災害が起きた時の連絡・救助を確認することが必要だ。
 女性への配慮も不可欠だ。琉球新報のアンケートで、県内41市町村のうち15市町村が女性に配慮した防災計画はないと答えた。更衣や授乳の際のプライバシー確保など課題が残る。
 今、地震が来て電気やガス、水道が止まったら何に困りそうかを想像してほしい。懐中電灯や水、食糧を備蓄するなど普段から備えることが大切である。防災で最も重要なのは「想定外」をなくすことだ。東日本大震災が残したさまざまな教訓を再確認したい。