<社説>「海兵隊撤退」明記 政府は真摯に受け止めよ


社会
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 県は施政権返還(日本復帰)50年に向けた日本政府への要請に「在沖海兵隊の撤退」を明記する方針を固めた。玉城県政として初めて「海兵隊」を明示した。

 これまで県議会は2度、海兵隊撤退を全会一致で可決している。二元代表制の下で、県民に選ばれた知事と議会が「海兵隊撤退」で足並みをそろえたことは、政治的なメッセージとして重い。日本政府に、沖縄側の要望を真摯(しんし)に受け止め、実効性のある対応を求めたい。
 基地の過重負担は、日本国内に分散していた基地を政治的理由から沖縄に押し付けたことに原因がある。
 石破茂元防衛相はかつて次のように発言したことがある。「反米基地運動が燃え盛ることを恐れた日本と米国が、米国の施政下にあった沖縄に多くの海兵隊部隊を移した」「本土から沖縄に基地が集約する形で今日の姿ができあがった。このことを決して忘れてはならない」
 その通りである。基地の過重負担を解消するため、1971年の「沖縄国会」で沖縄の米軍基地縮小に関する決議が採択された。
 佐藤栄作首相はその直後に発言を求められ「基地の整理縮小については速やかに実現できるよう、現在からこの問題に真剣に取り組む方針である」と述べた。
 しかし、国会決議から50年たっても「速やかに」実現させるはずだった基地の整理縮小は、目に見える形で進んでいない。政治の怠慢である。
 海兵隊撤退は米軍も検討していた。日本復帰後の72年10月、米国防総省は在沖海兵隊基地の米本国への統合を検討していた。だが、日本政府が海兵隊撤退の動きを引き留めたため、海兵隊撤退の機会を逸してしまった。
 海兵隊撤退について玉城デニー知事は「県議会でこれまで2度、全会一致で決議している」と自身の考えとしてではなく、経緯として述べるにとどめていた。
 16日までに県が作った最新の要請案は「在沖海兵隊の撤退を含め、当面は在日米軍専用施設面積の50%以下を目指す」と記述している。
 ただ、「50%以下を目指す」という目標に向け具体的な返還施設については示さず、日米両政府に検討を求める。大田県政が示したような独自の返還計画を打ち出さない点は、迫力に欠ける。
 16日に開催された日米外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、自衛隊と米軍の即応性強化のため、より高度な共同訓練に取り組むことを確認した。尖閣諸島周辺での大規模訓練を視野に入れている。
 中国が東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中で、沖縄側の要望に反して基地機能が強化され、危険の増大につながってはならない。日本政府は米中対立を先鋭化させず、緊張緩和に向け対話による外交努力を継続すべきだ。