<社説>同性婚否定「違憲」 法整備を検討すべきだ


社会
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 同性間の結婚を認めないのは憲法に反する―。婚姻届を受理されなかった北海道の同性カップル3組が国と争っている訴訟で、札幌地裁は17日、婚姻による法的権利が同性カップルに認められないのは憲法14条が禁じた不合理な差別に当たると判断した。

 少数者の基本的人権を救済する司法の役割を果たすと同時に、多様性を認め合う社会の流れに沿った画期的な判決だ。現状は差別だと裁判所が明確に踏み込んだ意味は重い。違憲状態の解消に向け、政府や国会は法整備を早急に検討すべきだ。
 同性愛を巡って社会全体の意識が肯定的に変わってきた中で、自治体が先導する形でパートナーシップ制度の導入が進んできた。同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行し、自治体が認めたサービスが利用できるようにしたものだ。
 2015年に東京都渋谷区と世田谷区が開始したのを皮切りに、パートナーシップ制度がある自治体は1日時点で78に上る。県内でも16年に那覇市が導入し、浦添市では開会中の市議会3月定例会で条例案が可決の見通しだ。
 しかし、パートナーとして自治体に登録されても、法的に保障された関係ではない。互いの死亡時に法定相続人になれず、養子の共同親権を持つことができない。税制上の配偶者控除を受けられないなど、異性カップルであれば認められる権利が保障されない不利益が生じている。
 17日の判決で、札幌地裁の武部知子裁判長は「性的指向は自らの意思にかかわらず決定される個人の性質で、性別や人種と同様」と指摘。愛する人が異性か同性かで法的利益に差異がある現状は、合理的根拠を欠いた差別的な取り扱いだとした。
 一方で、原告が求めた損害賠償については、日本で同性カップルの権利保護の議論がされてきたのは比較的近年であることから、「国会が違法性を直ちに認識することは容易ではなかった」として退けた。ただこれも、社会の変化に合わせた法整備の対応を国会に促したといえる。
 海外では01年にオランダが初めて同性婚を認め、昨年5月時点で同性婚を容認する国や地域が29に上っている。先進7カ国(G7)で同性カップルを法的に認めていないのは日本だけだ。
 野党3党は19年に同性婚の制度化を図る民法改正案を衆院に提出したが、具体的な動きになっていない。伝統的家族観を重視する与党の自民党内に、同性婚の法制化に抵抗が強いためだ。この構図は、選択的夫婦別姓の導入を巡る議論にも通じる。結婚の自由や権利が全ての人に保障されることの意義は、性的少数者だけの問題ではない。
 制度的な不平等を放置すれば、少数者への偏見を助長することにもなる。多様化する家族の在り方に合わせた、柔軟な法制度が必要だ。