<社説>日米2プラス2 沖縄の負担増許されない


社会
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 日米の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、海洋進出を進める中国を名指しで批判し、より高度な共同訓練に自衛隊と米軍が取り組むことを確認した。対中国を名目に沖縄周辺で訓練が激化する可能性がある。

 米側には、日本はじめ韓国やフィリピンなどの同盟国とともに中国を包囲する狙いがある。その一環として、アジア太平洋地域に地上発射型の新型中距離ミサイルを配備する計画もある。米軍のミサイル戦略と日本の役割分担が焦点として浮上している。
 だが米中の緊張が高まれば、沖縄での訓練が増す上、新型ミサイル配備を求める意見が広まる可能性がある。そうなれば、沖縄は有事に巻き込まれる恐れが一層強まる。ただでさえ基地の過重負担に苦しむ県民にとってこれ以上の負担増は絶対に許されない。
 名護市辺野古の新基地建設問題については、完成時期を明記せず「可能な限り早期に建設を完了する」と曖昧な表現にとどめた。大浦湾側での軟弱地盤の発覚で工期が大幅に延びる見通しだからだ。
 米会計検査院は日韓に駐留する米軍の利点などを点検した報告書で、専門家の指摘を引用し「沖縄のような地域での反対の程度を考えると、(辺野古新基地建設は)政治的に持続可能ではない」と記した。米シンクタンクの戦略国際問題研究所の報告書も「代替施設が完成する可能性は低そうだ」と改めて困難視している。
 これら米側からの意見や、建設に反対する県民世論を踏まえ、日米は建設を撤回し普天間飛行場を即時返還する方向へ早期に舵(かじ)を切るべきだ。
 新型ミサイルの配備など言語道断だ。米側には沖縄はじめ日本に新型ミサイルを配備する計画がある。沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に新型ミサイル配備網を築くため議会に予算を要求した。
 尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象であると確認するなど、米側は日本側の懸念や要望を全面的に受け入れた。日本政府高官は、将来的には沖縄への新型ミサイル配備を求められる可能性があるとし、米側から受けた厚遇の「領収書は高くつく」と述べた。沖縄側はこの動きを最大限に警戒する必要がある。
 中国を名指しして批判することに合意した日本が今後、米軍のミサイル戦略に貢献すれば、米中軍拡競争へ巻き込まれる懸念がある。その場合、真っ先に戦場になる恐れが強まるのは沖縄だ。それだけは避けねばならない。
 日米韓の結束を強化し、中国と北朝鮮に対峙する米国の方針に日本が同調する一方、韓国は日米との連携強化に応じながらも、米朝対話を促し中国との摩擦を避ける姿勢も見せた。まずはこうした発想を糸口に、多国間による対話の枠組みを模索し、紛争の火種を一つ一つ除去していく外交努力が必要だ。