<社説>土地規制閣議決定 権利侵害の悪法は廃案に

 政府は、米軍や自衛隊基地などの周辺の土地利用を規制する法案を閣議決定した。安全保障を理由に、国が住民の財産に制約を課すだけでなく、個人情報を収集し思想調査に立ち入ることまで可能にしかねない。新たな治安維持法と言うべき危険な法律だ。

 特に、狭い県土に防衛施設が集中し、国境に接する離島県でもある沖縄は、広く影響が及ぶ。政府は公明党に配慮して法案を修正したというが、根本的な問題は何ら変わっていない。私権侵害の悪法であり、廃案にすべきだ。
 法案が成立すれば、米軍や自衛隊、海上保安庁、原子力発電所などの施設から約1キロの範囲や国境離島が「注視区域」に指定される。国は不動産登記簿や住民基本台帳などの情報を収集し、土地の利用実態や所有者の個人情報を調べられるようになる。
 その上で「施設の機能を阻害する」と判断されれば、土地の利用中止を命じることができる。命令に応じなければ2年以下の懲役、または200万円以下の罰金に処すなど罰則も設ける。
 司令部を持つ自衛隊基地周辺などは「特別注視区域」に指定し、一定の面積以上の売買に氏名、国籍、利用目的の事前届け出を義務付ける。
 政府は、重要な施設周辺の土地を外国資本に買い占められ安全保障上の問題が生じることを防ぐのが法律の狙いだとしている。だが、調査や規制の対象は国籍を問わない。
 土地利用の中止命令の根拠である「施設の機能を阻害」という表現も曖昧であり、政府のさじ加減で対象が拡大する可能性がある。国家の都合で個人の財産権や経済的利益が制約されることには、本来厳しい歯止めが必要だ。
 表現や思想・良心の自由をも侵害する恐れがある。2007年に、自衛隊の情報保全隊がイラク派遣に反対する個人や団体を監視し、氏名や勤務先などプライバシー侵害に当たる違法な情報収集をしていたことが発覚した。今回の法案は、そうした情報収集を法的に可能とする。情報保全隊は、宮古島市と与那国町への陸自配備に伴って両島で発足している。
 国に調査されるかもしれないというだけで、政府への批判的な言動を萎縮させ、施設から起きる騒音や環境汚染に抗議することをためらう空気を生むだろう。安全保障を脅かす行為が対象の法律だから一般市民には関係がない、ということは決してない。
 沖縄には米軍基地が33施設、自衛隊施設が50施設、海上保安庁の施設が8カ所ある。米軍普天間飛行場のように、住民の生活・経済圏と隣り合わせで軍事施設が存在しており、施設の周囲に市街地や商業施設が多くある。
 政府は今国会での法案成立を目指すとしている。県は県民の人権や経済活動にどのような影響が及ぶのかについて、検証を急ぐ必要がある。法が成立してからでは遅い。



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