<社説>琉球新報活動賞 強い使命感に学びたい


社会
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 第43回琉球新報活動賞は、社会・地域・教育・産業・文化などの発展に貢献し続けている3団体、3個人に贈られる。「一隅を守り千里を照らす」を基本理念に、社会の一線で活躍する気鋭の人、団体を表彰するものだ。

 県内各分野の発展に大いに貢献している受賞団体・個人に敬意を表するとともに、功績への原動力となった強い使命感から多くを学びたい。
 居酒屋味自満チェーン代表の伊禮門清吉氏は児童養護施設の児童を長年支援し、育英会や社会福祉協議会など多岐にわたる寄付活動に取り組んできた。新型コロナ禍の中、ひとり親世帯や生活困窮世帯などへ弁当の無料配布も行っている。献血活動にも尽力している。人々の「笑顔のために」という社会への思いは良い手本になる。
 名護・さくらの会(儀保充会長)は、「さくらのまち」をうたう名護市で、カンヒザクラの育成と普及、観光振興に尽力してきた。市内各所の桜が美しい花を付けるようにと、周辺の除草や肥培、剪定(せんてい)作業などに取り組んでいる。名護と言えば桜というイメージは、こうした市民の支えがあってこそだと気付かされる。
 障がい者が活躍できる場の拡大を図るアートキャンプ2001実行委員会の朝妻彰代表は、障がい者の作品を展示してきた。その結果、障がい者アートを福祉としてではなく、芸術として社会が受け入れる風潮が生まれた。共同作業所づくりにも貢献し、障がいの有無に左右されないことが当たり前の社会を目指す。
 県民の主食である米の品質向上に取り組み、国内外で高い評価を得ているのは沖縄食糧(中村徹代表取締役社長)だ。食品衛生管理の国際規格「精米HACCP(ハサップ)」を国内企業で初めて取得した。「県民の食」を担う企業という強い使命感の証しだ。子ども食堂への支援にも貢献している。
 女性実演家14人でつくる女流組踊研究会めばな(山城亜矢乃代表)は、特に古典作品で女性の出演機会が限られている組踊で、女性だけの活動を模索し、舞台を作り上げてきた。鑑賞教室や作品紹介などを通して組踊を親しみやすくし、ファン層の開拓にも貢献した。古典の新たな魅力を発信している活動を高く評価したい。
 県立芸術大の加治工真市名誉教授は、生まれ育った鳩間島の言葉を残すことに尽力した。大学時代、言語学者で主任教授だった仲宗根政善氏から「鳩間島の方言辞典を残せ」と言われ使命感に燃え、出版を実現した。「石垣方言辞典」などの監修や編集も手掛けた。島の文化が凝縮されている言葉を残した意義は大きい。
 贈呈式は31日に行われる。受賞の背景には長年の粘り強い活動がある。それぞれの分野での貢献に感謝したい。背中を見て刺激を受けた後進たちが各分野で育ち、功績をさらに発展させることを願う。