<社説>知事会コロナ提言 実効性のある対策拡充を


社会
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 県内の新型コロナウイルス感染状況は、再び全国ワーストのレベルに陥っている。全国知事会は新型コロナウイルスに関する会議を開き、国への緊急提言をまとめた。

 変異株を含めた感染対策の徹底や、感染力に関する知見の速やかな情報提供に加え、感染対策強化のための財政支援なども求めている。
 全国的に「第4波」の入り口とも言われている。感染拡大を封じ込めるため、政府は知事会提言を重く受け止め、実効性のある施策を打ち出すべきだ。
 県発表の1週間ごとの県内感染状況は、2月11~17日の92人から増加に転じ、3月25~31日は588人となった。警戒レベルの判断指標七つのうち、4月5日現在で三つが「蔓延(まんえん)期」となった。県は那覇空港や離島空港にサーモグラフィーを設置し、発熱者を感知する水際対策を昨年4月から進めたが、現時点で大きな成果は得られていない。
 玉城デニー知事は全国知事会で、コロナ対策に充てる財源のさらなる拡充と、旅行前のPCR検査受検の徹底・強化、臨時交付金の地方単独分の迅速な追加配分と「感染者急増対応枠」といった別枠を設ける―などを国に要望した。財政支援を求めたのは、コロナ対策で県内市町村の財政状況が悪化しているからだ。
 沖縄振興開発金融公庫と琉球大学がまとめた市町村の財政状況調査によると、市町村の「貯金」に当たる財政調整基金残高について、31自治体が2020年度末は前年度より減少する見込みだ。全体の残高は648億円で、19年度末の約794億8千万円から18・5%減少となる。21自治体が、新型コロナウイルスの対策事業のために取り崩した。民間事業者の多い市部の合計では、事業者への補償などで同25・9%減った。都市部の自治体では約6割を取り崩した例もあった。
 21年度以降の対策事業の財源確保を不安視する自治体の声もある。暮らしのセーフティーネットに悪影響が出る事態があってはならない。
 知事会が提言しているように、変異株を含めた感染対策の徹底は急務だ。専門家が指摘するように、流行が変異株に置き換わると抑え込みが困難となる。このため渡航者への来県前の検査呼び掛け、空港での検査体制強化、集団感染発生時の優先的な変異株検査の実施などが感染封じ込めのカギを握る。
 一方、緊急事態宣言に準じた対策が可能となる「まん延防止等重点措置」が5日、大阪など3府県で始まった。営業時間短縮などの要請に事業者が正当な理由なく応じない場合、20万円以下の過料を科す。しかし効果は見通せない。
 玉城知事は経済への影響などを考慮して、国に適用を求めるか慎重になっている。
 5月には大型連休も控え、県内では聖火リレーも実施される。県と市町村、国には即効性がより求められている。