<社説>「まん延防止」適用 財政措置は国が責任持て


社会
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 新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づき、12日から沖縄にも「まん延防止等重点措置」が適用される。

 大型連休を含む5月5日までの期間で、県経済への打撃は計り知れない。罰則規定を含んだ措置の発令は、観光・宿泊業、飲食関連などさまざまな分野に影響を及ぼす。
 不要不急の外出を控えるなど県民一人一人の自覚も求められる。厳しい状況ではあるが、これ以上の感染拡大を防ぐためにはやむを得ない措置だ。一方で補償には今まで以上の財政措置が求められる。国は財源を自治体任せにせず、積極的に関与すべきだ。
 まん延防止措置の発令に伴い、知事は本島内の9市で飲食業者らに午後8時までの時短営業要請を出す。事業者が「正当な理由なく応じない場合」は命令を出し、それでも従わない場合は20万円以下の過料を科すこともできる。
 改正特措法は市区町村単位で範囲を絞るが、9市に隣接する町村部はどのように対応するのか。沖縄市と宜野湾市に隣接する北谷町など市部同様に人出が多い地域もある。
 まん延防止措置が始まれば、近隣町村も同様の時短営業に移行せざるを得ない。市部だけに行動抑制を求めても効果は見込めないはずだ。
 全県的な行動抑制を実現するには、時短要請が求められる飲食店に限らず食品卸などの関連産業、飲酒した客を対象にする運転代行サービスなど補償対象は広がるはずだ。5月の大型連休を見込んだレンタカー業界なども深刻だ。
 特措法は医療施設や埋葬・火葬への支援など都道府県が補助する費用に関し、5~8割程度、国の補助を定める。
 ところが事業者支援に関しては「必要な措置を効果的に講ずる」とあるのみで、国がどの程度自治体を支援するのか曖昧にされている。
 沖縄県はコロナ対策や税収不足を補うため、20年度末で約133億円(見込み額)あった財政調整基金のうち、約7割に当たる95億円を21年度予算で取り崩す方針だ。
 これ以上の財政負担を県や市町村に押し付ければ、自治体経営が破綻しかねない。
 事業者への支援は対象を絞るのでなく、より広い範囲で認めるべきだ。夏の観光シーズンまで持ちこたえてもらうために必要なのは、罰則でなく手厚い支援だ。
 同時に国の責任で検査を拡充すべきだ。変異株対策となるスクリーニング検査の抽出割合は、全国の32%に対し、沖縄は14%にとどまる。
 県内外や離島へ不要不急の往来自粛が求められる中、従来より感染力が強いとされる変異株の感染事例が直近1週間で20件あった。米カリフォルニア州で主に検出される変異株も県内で見つかった。外から持ち込まれた変異株が県内でまん延している可能性は十分にある。
 水際だけでなく米軍も含めた検査態勢の拡充にも政府は責任を持つべきだ。