<社説>離島住民にワクチン 公平性確保し接種急げ


社会
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 新型コロナウイルスワクチンについて、65歳以上の高齢者と一般住民を同時期に打つ「一斉接種」が、うるま市津堅島で始まった。小規模離島での実施は全国初の事例だ。

 小規模離島の多くは医師や看護師などの医療資源が都市部に比べて脆弱(ぜいじゃく)で、先手を打つ必要がある。接種計画を主導する政府は地元自治体と連携し、離島に暮らす住民を対象とした接種について、公平かつ円滑に実施するべきだ。
 沖縄の南の太平洋で台風2号が発生し、台風シーズンも本格化して悪天候も予想される。これらの影響を最小限にするためにも、接種完了に向けて速度を上げるべきだ。
 伊平屋村では、12月に島で計30人が感染し、島全体がクラスター(感染者集団)となる事態が発生した。感染者全員がフェリーで沖縄本島に移動し、病院や宿泊療養施設に入った。辺戸岬から20キロ余離れた鹿児島県与論町でもクラスターが発生した。
 小規模離島で発生すると、住民や行財政への負担は都市部よりも比重が大きく、あらゆる行政機能の停止につながる恐れがある。
 厚生労働省は通知で、高齢者人口が500人未満であることに加え、総人口が千人程度の市町村や離島も一斉接種の対象としている。医師が常駐しない小規模離島を抱える全国の自治体の中には、高齢者に限らず、島民への優先接種を表明したところもある。
 宮古島と石垣島、久米島を除く離島での高齢者への接種について、県は7月25日ごろまでに終えるとの見通しだが、小規模離島の状況を考慮すると、高齢者に限らず接種希望者にすべて行き渡ることが重要だ。
 4月17日の県発表の新規感染者は167人で、最多を更新した。これから大型連休を迎え、人の往来の増加も予想される。感染リスクが高まることが予想される。
 共同通信が16日に実施した調査によると、ワクチンの高齢者接種を受けた人は1万5千人に上るが、国が公表した約6700人とは2倍以上の差があった。
 国は接種状況をリアルタイムに把握して一元管理する新システムを構築したが、自治体は慣れない事務作業に手間取り、タイムラグが出ている。県外では接種予約のキャンセル発生などでワクチン廃棄も相次いでいる。届いていない地域からは理不尽に映る。
 厚生労働省の調査(3月25日時点)では、接種会場を設ける自治体の約2割が看護師不足を訴え、1人も確保できていないのも1割近くに上る。
 全国知事会などは、離島や過疎地で迅速な接種実現を求め、医師や看護師を地方へ派遣する仕組みを作るよう国に求めた。ワクチンの供給時期や量がはっきりとせず、医師確保の計画を立てづらいとの懸念も示された。ワクチンを公平に行き渡らせるためにも、政府は態勢づくりを急がなければならない。