<社説>入管難民法改正案 人権基準に達していない

 入管難民法の改正案が衆院本会議で審議入りした。政府は、不法残留などの理由で退去処分となった外国人が入管施設で長期収容される状態を解消すると説明する。さらに難民申請を繰り返す乱用を防ぎ、送還を拒む者を減らす狙いがある。

 しかし、改正案は長期収容の根本解決にならず、迫害を受ける可能性のある国へ難民を強制送還することにつながりかねない。複数の国連機関や国際人権団体から人権上問題があり条約違反を指摘されている。国際人権基準に達していない法案を通すわけにはいかない。改正案の再提出を求める。
 名古屋入管で3月6日、退去強制命令を受け収容中の30代のスリランカ人女性が死亡した。女性の収容は半年を超え長期化していた。改めて長期収容の問題が浮き彫りになっている。法相が調査を指示したが、死因は依然として判明していない。独立した第三者機関を設置して徹底的に調査すべきだ。
 改正案の特徴の一つは、長期収容を解消することにある。自由を奪い施設に拘束する長期収容は、人権侵害に当たる。このため改正案は全収容者が一時的に社会で生活できる「監理措置」を新設した。
 しかし、全員収容の原則は維持しているので根本的な解決にならない。司法の判断を経ずに収容が決まる手続きのやり方も見直さず、収容期間の上限もない。
 国連のゴンサレス特別報告者(移民の人権担当)らは3月31日、日本政府に改善を求める共同声明を出している。新設される「監理措置」は例外的な対応と位置付けられ、高額の保証金が必要など「あまりにも制限が多く、社会・経済的立場が原因の差別につながる」と指摘した。
 二つ目の特徴は、難民申請を繰り返す乱用を防ぐため、難民申請による送還停止を原則2回に制限する。
 2020年の難民認定率は1・3%。日本は他国に比べて難民認定が厳しい。難民なのに認定されなかった人は再申請するしかない。何度も申請してようやく難民と認定された人は少なくない。申請回数が最多の人は7回に及ぶ。
 難民申請を2回に限定すると、本来の難民が送還されてしまう可能性がある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「難民条約で送還が禁止されている国への送還の可能性を高め、望ましくない」と指摘している。認定の在り方を見直す必要がある。
 外国人労働者は県内でも増え続けている。沖縄労働局によると、20年10月末時点で前年比4・5%増の1万787人で過去最多だった。特に技能実習生は増加傾向にある。
 日本は国際人権規約を批准している。外国人を含む全ての人の身体の自由を保障している。入管難民法改正案は人権上問題がある。政府は国際機関の批判を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。



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