<社説>うるま市長に中村氏 自公に弾み、コロナが鍵


社会
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 25日に投開票されたうるま市長選で、現職の島袋俊夫氏の後継として出馬した新人の中村正人氏が、同じく新人の照屋寛之氏を破り初当選した。中村氏は自民、公明などから支援を受け、照屋氏は玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力が後押しした。

 今回の市長選は市政の継続か刷新かが問われたが、それだけではなく、秋までに実施される衆院選や、来年秋の県知事選の前哨戦としても位置付けられた。
 自公勢力は、1月の宮古島市長選で敗北したものの、2月の浦添市長選に続く勝利で、前哨戦とされた3市長選は2勝1敗となり、衆院選や県知事選に向けて弾みをつけた。ただ今後の政局の行方は未曽有のコロナ禍をどう乗り越えるかが鍵を握る。自公が支える菅政権、「オール沖縄」勢が支える玉城県政、いずれも新型コロナウイルス感染症対策や経済再建の成否が政局に影響しそうだ。
 玉城知事を支える勢力と自公勢力の全面対決となったうるま市長選は、国政や県政への評価も投票の判断材料となる選挙となった。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非を巡り鋭く対立する政府と県の双方にとって重要な選挙となった。それもあって、中村、照屋両陣営は支持基盤固めや支持拡大に全力を挙げた。
 中村陣営は地元企業など組織票を手堅くまとめ、自公の支持層の票を確実に積み上げた。それが奏功したことは、今後の選挙態勢づくりに好材料となった。
 一方、照屋陣営は強固な保守地盤であるうるま市で、辺野古新基地建設反対を前面に出さず、保守票の切り崩しを図ったが、及ばなかった。
 「オール沖縄」勢力が一枚岩になれなかったことも大きい。県政与党の一角を担う会派おきなわは中村氏の支援に回り、会派のメンバーである赤嶺昇県議会議長は選挙戦の演説で玉城県政批判を展開した。「オール沖縄」勢力は内部の亀裂が露呈した形だ。
 その上、玉城知事の出身地でもあるうるま市での敗北は、玉城県政にとって大きな痛手だ。今後、玉城知事の求心力が低下する可能性がある。衆院選や県知事選に向け、結束や態勢の立て直しが急務となる。
 今年最大の政局は衆院選である。今後、一気に総選挙に向けた態勢づくりが本格化する。自公勢力は、うるま市長選を制したことで、同市が含まれる衆院沖縄3区の大きな足場を引き続き固めた。一方の「オール沖縄」勢力にとっては逆風をどうはねのけるかが課題となる。衆院選の結果は、県内政局の天王山となる来年秋の県知事選に大きく影響する。
 ただ今年は例年と異なり、国政、県政ともに新型コロナ対策が最大の政治課題だ。有権者はその成果を注目している。経済対策を含め、それらの評価が政局を左右する。