<社説>自民3選挙全敗 菅政権批判に向き合え


社会
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 菅政権発足後初の国政選挙となった衆参3選挙区の補欠選挙と再選挙で、自民党は全敗した。

 相次ぐ「政治とカネ」の問題や新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ対策の不手際など、政権に対する厳しい批判の表れである。菅義偉首相は一連の結果に真摯(しんし)に向き合い、国民感覚に根差した政治に立ち返るべきだ。
 河井案里前参院議員の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙は、大規模買収事件を受け金権体質が最大の争点となった。自民党新人候補は野党統一候補に敗れた。投票率は33.61%で、過去2番目の低さだった。
 衆院北海道2区補欠選挙は、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相(自民党離党)の議員辞職に伴い実施。「族議員」と業界団体の癒着という、旧態依然の汚職構造が問われた。自民党は早々と候補者擁立を見送った。投票率は30.46%と過去最低で、2014年衆院選の52.86%を22.40ポイントも下回った。
 新型コロナウイルスに感染した立憲民主党の羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う参院長野選挙区補欠選挙は、自民党は元衆院議員を擁立したが、羽田氏の弟で立民新人に敗れた。政府のコロナ対策を巡り「後手後手だ」と批判された。投票率は過去最低の44.40%。
 「政治とカネ」に対する国民の反感と不信は、「保守王国」と言われる広島をはじめ、今回の結果に表れている。
 今回の3選挙は年内に実施される衆院選の前哨戦と位置付けられる。菅首相は衆院選に向け政権運営の立て直しを迫られるが、党内外における求心力低下は避けられそうにない。
 一方の野党は共闘が奏功し全勝に勢いづく。しかし、長野では原発ゼロや日米同盟見直しを巡り、共闘のきしみが露呈した。衆院選へ向け課題を残した。
 3選挙とも投票率が軒並み下がった。選挙は民主主義の根幹である。政治不信から有権者が投票所に足を運ばないのであれば由々しき事態だ。与野党の政治家らは、えりをたださなければならない。国民生活の安定を第一に与野党は真摯に向き合い、議論と政策を深めていくべきである。
 今回の全敗を受け、与党内で7月の東京都議選に合わせた同日選などの早期解散は急速にしぼんでいる。五輪後の9月解散、10月投開票の動きとなりそうだ。
 通常国会は6月16日に会期末となる。会期中に「デジタル改革関連法案」の参院審議を控える。この法案は「監視社会」の到来や企業による商業利用、個人情報の保護に多くの懸念を抱えたまま衆院を通過した。米軍や自衛隊基地周辺や国境の島などの土地利用を規制する法案も近く審議入りする。
 菅首相には新型コロナ対策をはじめ、国民の声に耳を傾け誠実な政権運営を求める。