<社説>B型肝炎最高裁判決 被害救済へ十分な対応を

 集団予防接種での注射器使い回しが原因のB型肝炎感染を巡り、最高裁は26日、慢性肝炎の「再発」から20年以内であれば国に損害賠償請求できるとする新たな司法判断を示した。これまでは、最初の発症から20年が経過していれば、より病態が進行した症状が後に再発しても、損害賠償を請求する権利は消滅しているものとされていた。

 今回の原告と同様に、最初の発症から20年という線引きで救済を阻まれてきた患者は他にもいる。国は、再発患者への正当な救済や早期解決に向けた協議など、被害救済の対応を急ぐ必要がある。
 原告の男性2人は、B型肝炎を20年以上前に発症し、いったん回復したものの、十年以上がたって再発している。
 一審の福岡地裁は請求通り1250万円の支払いを国に命じた。だが、二審の福岡高裁は、最初の発症時から20年が経過し、損害賠償権が消滅する「除斥期間」を迎えているとして、国に賠償を求めた原告の請求を棄却した。
 「除斥期間」は、加害行為時から20年を過ぎると被害者は損害賠償できなくなるとした、民法の規定だ。ハンセン病や旧優生保護法の被害を巡る国家賠償請求訴訟でも、除斥期間を理由に国による賠償が否定されることがある。
 しかし、国の過ちによって被害を受けた国民への補償について、民法の除斥期間を当てはめて救済範囲を区切ろうとする国の主張が、本来はあってはならない論理だ。
 予防接種法が施行された1948年以降、注射器の使い回しによるウイルス感染の危険性が指摘されながら、国が交換を義務付けたのは40年後の88年だった。薬事行政の重大な失態だ。
 乳幼児期に受けた予防接種が原因で、過酷な闘病を続ける人たちがいる。最初の発症から長期間が経過した後に、ウイルスの再増殖で被害に苦しむ事例もある。
 最高裁は判決で「どのような場合に再発するかは医学的に解明されておらず、最初の時点で後の発症による損害賠償を求めるのは不可能だ」と指摘。薬害のように被害が遅れて生じる場合は、再発時を損害賠償請求の起算点とするべきだと明確に判断した。
 除斥期間の適用を否定したわけではないが、補償額で不合理な格差があった患者の救済拡大につながるものであり、評価したい。
 注射器の使い回しによるB型肝炎の感染者は、全国で45万人に上るとみられる。2012年に特別措置法ができ、症状に応じて国から給付金が受けられることになった。だが、受給に必要な裁判手続きを知らない人も多く、被害救済は道半ばだ。
 損害賠償を求めて訴訟を提起した県内の原告は442人を数えるが、潜在的な対象者はさらにいる可能性がある。全ての人に十分な補償を届けるため、救済制度の周知を図ることも国の責務だ。



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