<社説>憲法施行74年 国際平和の原則 実践を

 憲法は施行から74年を迎えた。戦争放棄の9条を掲げ、平和主義を基本原則とする憲法の重みが今ほど増している時期はない。

 憲法が掲げる「平和」とは、軍事力に頼らない国際平和主義である。戦争や圧政などによる恐怖や、貧困、飢餓、人種差別などの「構造的暴力」を克服する概念と言える。
 米中対立が激しさを増す中、国際社会の緊張緩和と信頼醸成のため、平和憲法の原則の実践こそ求められる。
 ところが、国民の対中感情の悪化やコロナ禍を利用して、改憲勢力が勢いづいている。自民・公明両党は、改憲手続きを定めた国民投票法改正案を、連休明け6日の衆院憲法審査会で採決し、11日に衆院通過させる方針だ。多くの問題について議論は一切深まっていない。6月16日の国会会期末までの成立を狙った、日程ありきの強行突破だ。
 憲法学者の水島朝穂早稲田大教授は、憲法を変える前提として(1)高い説明責任(2)情報の公開と自由な討論(3)熟慮の期間―を上げている。憲法を変えるという側は、憲法を変えないことによる不具合を具体的に説明し、その上で、憲法を改めることでしか問題が解決しないことを明確にする必要があるというものだ。
 自民党は2018年に(1)9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項の新設(3)参院選「合区」解消(4)教育無償化・充実強化―の改憲4項目をまとめている。このうち、参院合区の解消と教育無償化は、教育や選挙制度に関する法律で対応が可能だ。どうしても憲法を変えなければならないという説明が足りていない。
 聞こえのいい政策で9条改憲の本音を隠した、カムフラージュと言うほかない。自民党は米国との軍事的一体化に前のめりだ。憲法に抵触する集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を、数の力で成立させたことを忘れてはならない。
 緊急事態条項については、新型コロナウイルス対策の徹底を求める国民世論を逆手にとり、内閣に強大な権限付与を認めるため改憲が必要だという主張がされている。しかし、現状で新型コロナ特措法があるように、これも個別の法律で対応できる。
 何より、私権制限を伴う緊急事態条項は、個人の権利尊重や、法によって国家権力を縛る「立憲主義」といった、憲法の理念を根本から変えることになる。コロナ禍の空気を利用して一足飛びに手続きを進めていいものではない。
 アドルフ・ヒトラーは、当時最も民主的と言われたワイマール憲法の緊急事態条項を利用して政権を奪取。国会で全権委任法を成立させナチスの一党独裁を確立した。緊急事態条項には平和憲法を骨抜きにする危うさがある。
 憲法問題の前に、感染症のまん延を許した政府の不手際をきちんと検証した上で、そこから必要な対策や法制度を熟議していくことが筋だ。



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