<社説>赤木ファイル「存在」 黒塗りせず全面開示せよ


社会
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 ファイルは、やはり存在した。財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんが改ざんの過程をまとめた文書「赤木ファイル」の存否すら明らかにしなかった国側が一転して認め、開示する方針を示した。

 公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的財産である。その公文書を改ざんした過程を示す「赤木ファイル」の黒塗り提出は許されない。全面開示し、公文書改ざんの真相を究明してもらいたい。
 事の発端は2016年、大阪府の国有地が学校法人「森友学園」に評価額より8億円以上安く払い下げられた問題にある。安倍晋三前首相夫人の昭恵氏が一時、名誉校長に就任していたことを追及された前首相は、国会で「私や妻、事務所が関わっていれば総理も国会議員も辞める」と明言した。この答弁をきっかけに文書改ざんが始まった。
 前首相答弁直後に財務省理財局は昭恵夫人らの名前が記載された書類の存否を調べ、近畿財務局に伝えて交渉記録を廃棄した。
 財務省が18年6月に公表した調査報告書によると、理財局長だった佐川宣寿氏が改ざんの方向性を決定づけ、理財局幹部らが昭恵夫人に関わる記述を削除するなどした。
 近畿財務局側の関与も記されているが、赤木さんが強いられたとされる作業の詳細は明らかにされていない。赤木さんの妻雅子さんが国側に損害賠償を求めた訴訟で、赤木さんが改ざんの過程を記したとされる「赤木ファイル」の提出を要請していた。
 国側は意見書で「赤木ファイル」は「行政文書」ではなく「個人的に作成」したと説明している。このため文書の存否を回答する必要はないが「裁判所から任意提出の要請があった」ため開示するのだという。公文書に対する基本認識が抜け落ちている。
 「財務省行政文書管理規則」によると、「行政文書」とは「財務省の職員が職務上作成し、又は取得した文書」と定義している。赤木さんは、上司の指示に従って「職務上」作成したのである。何が「行政文書」かどうかを、省庁の都合によって恣意(しい)的に判断することは許されない。
 国はファイル提出に当たって、黒塗りなどマスキングする方針を伝えている。黒塗りにすれば文書改ざんの経緯、官僚による政治への過剰な忖(そん)度(たく)の背景が解明できない。裁判所は国に対し、全面開示を求めるべきだ。
 国は裁判所だけでなく国会にもファイルを提出しなければならない。「森友学園」の国有地売却問題を巡る国会質疑で、麻生太郎財務相、佐川財務省理財局長(当時)らが計139回事実と異なる答弁をしている。行政を監視する国会の軽視であり、三権分立の原則を定めた憲法に反する。
 裁判所とは別に国会でも調査特別委員会を設置して真相を徹底究明すべきだ。森友問題はまだ終わっていない。