<社説>デジタル法成立 個人情報保護 後退させた

 デジタル庁設置を柱とするデジタル改革関連6法が参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

 国民の利便性向上を強調するが、実態は自己情報コントロール権を保障せず個人情報保護を後退させる内容だ。現行制度を抜本的に変更するにもかかわらず、法案を60本以上束ねて提出した政府の国会軽視と、熟議せず成立させた国会の責任は重大だ。
 デジタル改革関連法成立によって、改革の司令塔で首相をトップとするデジタル庁を9月1日に発足させる。デジタル庁に権限を集中させ他省庁に業務見直しなどを勧告する。行政手続きのオンライン化を進め、マイナンバーの利用拡大や押印を求める手続きの削減などデジタル社会に向けた環境を整備する。
 関連法の柱の一つが個人情報保護制度の見直しだ。民間、行政機関、独立行政法人の三つに分かれている個人情報保護法を一本化し、共通のルールを導入する。内実は規制が緩い国のルールに合わせるということだ。その上で中央省庁が持つ個人情報を匿名加工して民間に提供する現行制度を、自治体にも広げる。
 これまで個人情報の保護は、住民に近い自治体がそれぞれ条例を制定し、思想信条や病歴・犯歴などの要配慮情報の収集は禁じるなど慎重に運用してきた。住民本人の合意を得た上で、個人情報を取り扱うことが自治体では原則となっている。制度の見直しで個人情報保護の原則はなし崩しになり、目的外に使われ、漏えいする恐れがある。
 実際に現行制度でも、防衛省が米軍横田基地の夜間飛行差し止め訴訟や、航空自衛隊小松基地の騒音訴訟の原告名簿などを民間への提供対象にしていたことが発覚した。
 関連6法の中で基本理念を定めた「デジタル社会形成基本法」に、個人の権利を担保する自己情報コントロール権が明記されていない。
 専修大学の山田健太教授(言論法)は「情報を有する側の縛りを一貫して緩めてきたのが日本の法制度であって、一方で自己情報コントロール権も含め、個人の権利化は進捗(しんちょく)がない。その結果、両者のバランスはますます崩れる一方」と警鐘を鳴らす。
 個人情報の保護について監視する仕組みにも問題がある。全体の監督は個人情報保護委員会に委ねられる。しかし、捜査情報は個人情報保護委員会の監視対象から外されている。不適切な個人情報の取り扱いに対して勧告はできるが、命令はできない。権限が不十分だ。
 日本弁護士連合会は、官民で管理する個人情報全般の取り扱いを監視・監督する独立した第三者機関を創設し、専門的な能力を備えた職員をそろえるための定員と予算を担保するよう求めている。政府は日弁連の提言を真摯(しんし)に受け止め、デジタル庁設置までに、監視・監督の権限を強化する手立てを講じるべきだ。



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