<社説>緊急事態宣言を要請 めりはり利いた対策を


社会
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 県は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う医療崩壊を防ぐため、緊急事態宣言の対象地域に追加するよう政府に要請した。同時に医療非常事態宣言を発出した。

 国内のワクチン接種率は3.5%にとどまり、変異株の出現により若い世代にも重症者が拡大している。さらなる感染拡大を抑え込まなければ、医療崩壊を招き、救える命が救えなくなる。
 政府の見通しの甘さと、迷走するコロナ対応に菅内閣の支持率は急落している。政府と自治体との意思の疎通に不安を覚える。
 これまでの感染拡大防止策はなぜうまくいかなかったのか。県には課題を検証した上で、めりはりの利いた対策を示してもらいたい。危機感を共有して重大局面を乗り越えなければならない。
 九州経済調査協会がまとめたゴールデンウイーク(GW)中の全国の宿泊稼働指数によると、沖縄は連休前(4月1日~28日)より8.2ポイント上回る29.9で1位だった。GW中の県外からの人流増も感染拡大に影響を及ぼしている。人流増に対する水際対策がうまくいっていない。
 全国各地で「第4波」が猛威を振るい始めていた8日、沖縄県の人口10万人当たりの新規感染者数は28.4人。感染爆発を示すステージ4(25人以上)を超えていた。その後も感染者数は増え続け、19日時点で、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は57.17人で全国4位だ。
 島しょ県の沖縄は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)だ。それだからこそ、より強い対策を講じられる非常事態宣言を適用すべきだったのではないか。
 県内では既に16の市町が今月末まで「まん延防止等重点措置」の対象となっているが効果は上がっていない。19日は1日当たりの感染者数が203人となり2日連続で過去最多を更新した。病床占有率は101.3%。病床逼迫(ひっぱく)で適切な治療を受けられないまま死亡する事態が現実のものになろうとしている。容体急変に備えた医療体制の整備が急務だ。
 従来株から感染力の強い変異株に置き換わりつつあることも感染拡大に拍車を掛けている。感染力が高いとされる「N501Y」変異を持つ英国由来の株の割合(5月7日~14日)は53.33%だった。変異株の割合はさらに高まることが予想される。感染力は従来株の1.32倍で、高齢者以外でも重症化する割合が高い。ワクチンの効果を弱めることも懸念される。
 コロナ禍が本格化してから1年。経済への影響は深刻だ。飲食店などへ酒類の提供停止措置は経済団体から「不公平」と反発を受けて見送った。いくら強い措置を講じても、関係者の理解と協力がなければ期待した効果は表れない。多大な影響を受けている観光関連事業者をはじめ幅広い業種に財政支援は欠かせない。早急に対策を示してほしい。