<社説>高校部活133人被害 指導者、学校の意識変えよ


社会
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 「133」という数字をどう受け止めるか。県教育委員会が実施した2020年度部活動実態調査で、体罰や暴言などのハラスメントを受けたと訴える生徒の数だ。

 体罰や暴言が教育現場にあってはならないのは全ての人に共通する認識だ。その前提に立てば、県教育委員会が示す「全体として良好な部活動指導が行われている」という結論は導き出せるはずがない。
 133人の生徒が被害を訴える状況を指導者や校長をはじめとする学校関係者は直視すべきだ。その上で被害をゼロにすべく、県教委主導で意識改革を進める必要がある。
 人数以上に深刻と思われるのが被害の状況だ。部員から複数回答で得た被害の申告は暴言115人、無視46人、体罰28人、セクハラ12人となった。申告が延べ200人を超えるのは、一人の部員が複合的な被害に遭った可能性を示唆している。
 しかも加害者は顧問教諭が52.6%と飛び抜けて多い。一部とはいえ、いまだに暴言や体罰を加える高圧的な指導者がいることがうかがえる。
 部活動は教育の一環である。あくまでも生徒の自主的な活動であり、指導者や学校は生徒の成長を支えるのがその役割だ。現状は生徒の成長を阻害する指導者が少なからずいることになる。
 同時に指導者との意識の差も浮き彫りになった。指導者との信頼関係を「あまり感じない」「全く感じない」という回答が部員と保護者は2割近くいるのに対し、部員と信頼関係が築けていないと考える指導者は1割にすぎない。
 もし指導者からの被害に遭ったとしても校長ら学校の責任者に相談する例はほとんどない。生徒と保護者からの信頼は、指導者らが思うほどには得られていないのだ。
 さらに校長ら学校の管理職が被害の訴えを受け、対応できたかにも疑問が残る。被害を受けた部員のうち88人が未解決としているのに対し、校長ら管理職は7割が解決したと答えているからだ。
 学校と指導者は、生徒や保護者の信頼を得るにはどうすればいいか真剣に考えてもらいたい。体罰や暴言は論外として、科学的根拠に基づく指導や休養日の設定など取り組みが遅れていることは数多くある。また表面的な調査では分からない部員の声に耳を傾けるべきであろう。
 今回の調査は全体の回答率が31%にとどまった。名桜大上級准教授の大峰光博氏が指摘するように、回答しなかった指導者が過半数いることから、今回の調査のみで部活動指導の在り方が適切かどうかを判断するのは早計だ。
 まずは全数調査を再度実施する必要がある。その上で指導法の研修などを行政主導で実施しなければならない。
 改めて確認したいのは、教育活動の主役は子どもであることだ。子どもたちが安心して部活動に取り組む環境を整備するのは大人の役目だ。