<社説>未就学児の実態調査 公助による積極支援を


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大が、県内の低所得層とひとり親世帯の家計を直撃し、保護者の精神状態に悪影響を及ぼしている実態が、県の2020年度子ども調査(未就学児)で明らかになった。

 「毎日泣きながら暮らしています。助けてください」。自由記述に書き込まれた保護者の悲痛な叫びを、重く受け止めなければならない。
 経済的な苦境は子育ての余裕を失い、しつけの悪化や子の虐待につながる可能性がある。低所得層とひとり親を孤立させてはならない。資金面の支援に加え、「アウトリーチ」と呼ばれる訪問型支援を積極的に活用したい。コロナ禍の中で「公助」が今ほど求められている時期はない。
 未就学児の保護者を対象にした沖縄子ども調査は、1歳児と5歳児の保護者を対象に実施された。
 新型コロナウイルスの影響で、世帯収入が「5割以上減った」「まったくなくなった」と答えた人は、最も所得の低い層(1歳児の世帯)が14・5%、ひとり親世帯は13・4%を占めた。「子どもたちにご飯をおかわりさせてあげたい」という自由記述に言葉を失う。
 今回の調査は2、3回目の緊急事態宣言前(2020年9~10月)に実施された。現状はさらに深刻化していると考えられる。
 だが、公的制度(生活福祉資金貸付金)の利用状況を見ると、「利用したことがある・利用している」と回答した割合は、最も低い所得層で9・4%(1歳児)と7・7%(5歳児)。1割に満たない。この層の1割余しか市町村の相談窓口を利用していない。
 つまり、相談窓口で待っていても実態はつかめない。孤立しがちな世帯を掘り起こし制度の活用を促すために、対象世帯へ直接的な働き掛けが必要となる。
 1歳児の母親に産休制度の利用状況を聞いたところ、非正規労働が多く最も所得が低い層は47%にとどまる。そのうち25・3%は「職場に制度がない」と回答している。
 産休は労働基準法に定められ、パートやアルバイト、契約社員など雇用形態を問わず取得できる。低所得で不安定雇用の母親にこそ利用されるべきだ。適用されない現状を直ちに改善してもらいたい。
 新型コロナは保護者の精神状態にも影響を与えている。世帯収入が減り、その減少幅が大きい世帯ほど、保護者の抑うつ傾向が高かった。所得の減少による生活不安がストレスにつながっている。そのはけ口が子どもに向かうことを危惧する。
 コロナ禍で実施された今回の調査は、さまざまな課題を浮き彫りにした。今後の貧困対策に生かしてほしい。政府の「子供の貧困対策に関する大綱」は「子育てや貧困を家庭のみの責任とするのではなく、地域や社会全体で課題を解決する」と強調している。国による包括的な支援策を切れ目なく打ち出すべきだ。