<社説>米軍ヘリ津堅不時着 米軍機の飛行を停止せよ

 人身に被害がなかったことは、本当にたまたまというしかない。米海兵隊普天間飛行場所属のUH1Y多用途ヘリが「機械的問題」から津堅島の畑に不時着した問題だ。

 不時着地点が民家に120メートルという近さは住民に恐怖を与えた。深夜に民間地上空で訓練したことも信じがたい。
 米軍が県民の安全に配慮していないことが改めて分かった。県民の不安を払拭(ふっしょく)できないのであれば、米軍機は全面的に飛行を停止すべきだ。
 ほんの少しでも機体の制御が失われていれば、住民に被害が及んだ可能性がある。
 さらに午後10時以降の飛行を制限する騒音規制措置が形骸化している実態も示した。事故を通し、米軍の身勝手さばかりが浮き彫りになっている。米軍が原因究明と県民への説明を尽くすのは当然だ。同時に日米間の約束が守られているのか、日本政府も徹底的に検証すべきであろう。
 今回の不時着で再び焦点となっているのが、日米地位協定締結と同時に作成された「合意議事録」だ。占領期の米軍が持つ特権を温存した事実上の密約であり、事故発生時の捜査や検証を妨げている。
 山本章子琉大准教授によると、合意議事録は地位協定の範囲を超え、米軍提供施設・区域だけでなく「その近傍」でも航空機の離着陸や現場封鎖を認めている。
 「近傍」の定義自体もなく、これまでの事故発生時の対応を見ると、米軍が沖縄全体を「近傍」と認識しているとしか思えない。「沖縄に基地があるのではなく、基地の中に沖縄がある」という例えが、現実味を持つ。
 今回の不時着でも、県警がどこまで原因究明に当たれるか不透明だ。外周規制線は日本側が担うが、現場に近い内周規制線は実質的に米軍が管理している。
 2004年の沖国大への米軍ヘリ墜落を契機に、日米両政府は05年に日米双方が事故現場に入れるとするガイドラインを取り交わした。19年には東村高江の米軍ヘリ不時着・炎上(17年)を受け、ガイドラインを改定、日本側警察や消防の速やかな現場立ち入りを定めた。
 しかし実際は米軍側の同意が必要であり、事故機に日本側が触れることはできない。4日時点で日本政府は内周規制線内への立ち入りを申し入れていない。沖国大、高江の二つの事故で米軍は協力せず、結果的に被疑者不詳のまま県警は捜査を終えた。
 占領時代の特権を手放さない米軍と、捜査・検証に積極的な姿勢を示さない日本政府の双方に県民は憤りを感じている。県民の命と、米軍の運用、どちらを優先しているのか。現時点での対応を見ると、明らかに後者だ。
 沖縄の空は沖縄に住む人々のものである。米軍機が傍若無人に飛び交ってよい場所ではない。飛行停止へ向けて日本政府は米軍に対し、厳然たる姿勢を示すべきだ。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス