<社説>コロナ拡大で休校 家庭での感染防止徹底を


社会
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 新型コロナウイルス感染拡大により、全ての県立学校と県内小中学校の多くが休校することになった。10代など若い年代で感染が拡大し、学校でクラスター(感染者集団)が相次いでいるからだ。急な決定に関係者には戸惑いがあるが、子どもたちの命を守るためにはやむを得ない措置だ。

 県が5日に発表した感染者数によると、新規261人のうち10代は44人に上り、他の年代と比べて最多が続いている。感染力が強い変異株の広がりが影響しているとみられている。
 感染者全体の推定感染経路は、家庭内が圧倒的に多い傾向にある。休校の効果を最大限に発揮するには、手洗いや消毒など家庭内感染の防止を徹底することが肝要だ。県立中部病院の高山義浩医師が「子どもたちを守るため、大人が行動を自粛することとセットで初めて休校が意味を持つ」と言うように、大人の行動が鍵を握る。責任は重大だ。
 高校など県立学校は原則7日から20日まで休校し、開始にばらつきがあるものの22市町村が小中学校の休校を決めた。感染拡大が見られない北部や離島の16町村は通常登校とし、今帰仁村や本部町は午前だけ授業するなど対応が分かれた。石垣市は既に休校を始めている。市町村の事情に応じた判断があっていいが、登校を認める学校では感染防止に最大限努めてほしい。
 生徒8人が感染した県立学校は「感染対策は徹底していても、誰もが感染する恐れがあることが分かった」と本紙の取材に述べている。校長は、家族の体調に関する情報共有を含め、学校と家庭が連携を強める必要性を強調した。家庭の積極的な協力があってこそ、学校の取り組みが生きる。登校を認める地域では、連携を深めることが大切だ。
 一方、休校措置を取る地域は、家庭の感染防止が一層重要となる。その上で児童生徒への学習支援が必要だ。本紙の取材では、各市町村でオンライン授業ができる学校は一部にとどまり、全面的に実施できる自治体はゼロである。端末の配布遅れや家庭のネット環境が整っていない。国、県、市町村は連携して教育の機会均等確保に全力を挙げるべきだ。
 休校となった子どもたちの居場所確保、困窮世帯への食料支援も喫緊の課題だ。子どもの受け皿となる学童などの施設で感染リスクを高める密を避ける対策が要る。小さな子どもがいる従業員に企業などが休暇や在宅勤務を認める対応も不可欠だ。
 県独自の判断で休校措置に踏み切ったのは、全国一斉休校措置を取った昨年春以降は沖縄が初めてとなる。人口10万人当たりの感染者数が全国で突出して多く、医療の逼迫(ひっぱく)など深刻な危機的状況にある。それから脱せるかどうかは、休校だけでなく、外出や会合などの自粛、店舗の時短営業や休業など県民一体の取り組みに懸かっている。