<社説>共同参画推進法改正 男女格差解消へ具体策を


社会
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 女性の政治参画拡大を目指す「政治分野の男女共同参画推進法」の改正案が、10日の衆院本会議で可決され、成立した。政党や衆参両院に加え、男女共同参画の推進主体として新たに地方議会も明記した。女性議員を増やす実効性ある対策が求められる。

 日本は先進国の中でも男女共同参画が大きく遅れ、特に政治分野における男性偏重は歴然としている。社会のルールを定める政治の意思決定の場で正しく女性の声が反映されることが、社会全体のジェンダーギャップ解消を進める優先事項だと理解すべきだ。
 女性議員の拡大に向けて、候補者や議席の一定比率を女性に割り当てる「クオータ制度」の導入などの具体策を、急ぎ検討してもらいたい。
 国会議員の女性比率は衆議院が9.9%、参議院が22.9%にとどまる。各国の議員でつくる列国議会同盟(IPU)が世界193カ国を対象にした今年1月時点の女性議員の割合調査で、日本は166位という低さだった。
 政府は、指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%にするという目標を掲げたが、達成できていない。昨年9月に発足した菅義偉内閣も、閣僚20人のうち女性は2人しかいない。
 沖縄でも、県議会は議員48人のうち女性は7人で、全体の14.5%にすぎない。立候補の段階で、男性56人に対して女性は8人と圧倒的に男性に偏っている。市町村議会は11町村で女性議員がゼロだ。
 有権者の半数は女性なのに、被選挙権の行使について性別による明らかな差がある。当選しても数が少ない女性議員は孤立しやすく、同僚や有権者からハラスメント(嫌がらせ)を受けた経験者は少なくない。女性への差別が政治参加の意欲や機会を奪っていないだろうか。
 女性の政治参加を巡る格差と不平等をなぜ解消できないのか、各議会がその原因の究明と向き合い、対策を講じなければならない。
 改正法には、女性の立候補を妨げるセクハラやマタニティーハラスメントへの対応が盛り込まれた。男性偏重を改める啓発活動はもちろん、妊娠や育児中でも議会活動と両立できる施設・制度の整備、生活に支障なく出席ができる議会の開催時間見直しといった環境づくりが必要だ。
 今回の法改正も、候補者に占める女性割合の数値目標を各党に義務付ける規定を見送るなど、課題は残している。供託金や選挙運動に要する費用が高額なことや、選挙に出るに当たって収入を失うリスクなど、限られた人しか立候補ができないという政治参加の壁も指摘される。
 議会は社会を映す鏡だ。政策決定が偏った政治は次第に硬直化し、地域社会を停滞させる。女性に限らず、社会を構成するあらゆる人々の参加が議会の在るべき姿だ。女性の政治参画拡大は、議会の多様性への一歩となる。