<社説>最高裁が別姓「合憲」 司法の役割を放棄した


社会
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 夫婦別姓を認めない法律の是非が問われた家事審判で、最高裁大法廷は「合憲」の判断を示した。2015年の合憲判決を踏襲した。

 15年の大法廷判決は、同姓の仕組みが社会に定着しているとし、同姓にすることの不利益も「旧姓の通称使用で一定程度緩和できる」と示している。しかし、女性の社会進出や世論の変化を過小評価し、合憲判断した理由を示さず、問題を立法府に委ねた。司法の役割を放棄したと言わざるを得ない。
 審判を起こしたのは東京都の事実婚の夫婦3組。別姓での法律婚を希望したが、婚姻届が受理されず、受理を求めて18年に家事審判を申し立てた。夫婦別姓を認めない民法750条や戸籍法規定が違憲かどうかが争点になった。最高裁裁判官15人のうち11人が賛成、4人は違憲だった。
 最高裁は決定理由で「働く女性が増え、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する人の割合が増加するなど、社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、15年の判断を変更すべきだとは認められない」と指摘した。
 しかし、15年判決後の16年に国連の女性差別撤廃委員会から、夫婦に同姓を強いる制度を改善するよう勧告を受けている。内閣府の17年世論調査では、選択的夫婦別姓について賛成が42・5%で、反対の29・3%を大きく上回った。最高裁はこうした動向に目を背けている。
 むしろ違憲判断をした4人の判断に注目したい。別姓の選択肢を設けていないのは「婚姻の自由を制約する」「個人の尊厳をないがしろにする」と述べた。「同姓を受け入れない限り法律婚を認めないのは、不当な国家介入」と指摘した。
 合憲とした裁判官のうち3人は補足意見で「事情の変化によっては違憲と評価されることもあり得る」と含みを持たせたことにも留意したい。
 木村草太東京都立大教授は、今回の訴訟で新たな問題とされたのは「なぜ同姓合意をしないと、子どもの共同親権設定や婚姻関係の戸籍による公証など、婚姻の効果を得られないのか」だという。つまり同姓とする合意を婚姻成立要件とすることによる平等権侵害(憲法14条1項)だ。しかし、「本質的問題に全く向き合わなかった」と最高裁を批判している。
 今回の最高裁決定は、国会にボールを投げ返した格好だが、この5年半、国会で議論が停滞していた状況を全く踏まえていない。
 夫婦同姓を現在も法律で義務付けている国は日本だけだ。選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正を法制審議会が答申してから四半世紀。別姓に反対する自民党など保守派による「家族の絆が壊れる」との主張は、もはや説得力がない。二度にわたる最高裁の要請を真摯(しんし)に受け止め、国会は問題解決へ迅速に対応しなければならない。