<社説>経産官僚の逮捕 国民に対する背信行為だ


社会
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 新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業などを支援する国の家賃支援給付金をだまし取ったとして、経済産業省の若手キャリア官僚2人が詐欺容疑で逮捕された。

 給付金は経産省の中小企業庁が所管する。支給する側が制度を悪用して税金を懐に入れた。資金繰りに苦しむ中小企業と国民に対する背信行為であり極めて悪質だ。官僚の質の劣化を憂慮する。
 捜査当局に全容解明を求める。同時に、経産省は未然防止できなかった原因と抜本的対策を国民に示す責任がある。
 2人は高校の同級生。共謀して昨年12月下旬ごろに虚偽の内容で給付金を申請し、今年1月上旬ごろに約549万円を振り込ませて詐取した疑いがもたれている。「2人で相談してやった」と容疑をおおむね認めているという。
 新型コロナ対策として、中小企業などの経営を支援する持続化給付金と、家賃負担を軽減するための家賃支援給付金がある。今回不正受給が発覚した家賃支援給付金は、最大600万円を支給する。
 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、沖縄県は7月11日まで緊急事態宣言を延長している。酒類提供店や飲食店は引き続き休業・時短営業が続く。県をまたぐ往来の自粛も継続しているため、基幹産業の観光事業者は厳しい状況に置かれている。県内企業のほとんどが中小零細で、コロナ禍は経営に深刻な影響を及ぼしている。苦境にあえぐ企業を支援する資金を、不正受給するとは言語道断である。
 官僚の不祥事は不正受給にとどまらない。経産省の職員が4月、国会の女子トイレで女性を盗撮する事件を引き起こしている。
 2月には総務省幹部が放送事業会社「東北新社」やNTTから高額接待を受けていた問題が発覚した。同省は事務方ナンバー2の総務審議官ら11人を処分した。NTT接待は2人を懲戒処分とした。
 農林水産省は2月、鶏卵を巡る贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表から会食の接待を受けたとして、枝元真徹事務次官ら計6人を処分した。
 なぜ官僚の不祥事が続くのか。自民党行政改革推進本部が5月にまとめた提言は、規制の数が過去20年間で1・5倍に増えていることを問題視している。「行政の関与度合いの強い規制が多ければ、不正や癒着を誘発しやすい」と指摘する。
 あるいは安倍長期政権下で官邸主導のスタイルが定着したことが一因なのか。森友問題では、人事を握られた官僚が官邸の意向を忖度(そんたく)して、公文書を改ざんしたのではないかと取り沙汰された。
 国家公務員の志望者が減り、若手官僚の7人に1人が退職を希望する「霞が関崩壊」の危機に直面していると言われる。国民の信頼を回復するため官僚組織の在り方を根本から見直す時期に来ている。