<社説>中国共産党100年 大国としての責任果たせ


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 中国共産党が創建100年を迎えた。1日の祝賀大会で習近平国家主席は一党支配の正統性を誇示しつつ、米国をはじめとする諸外国の干渉には対決姿勢を示した。

 世界第2位となった経済大国の進路を世界が注目している。武力や権力を振りかざす覇道に進むか。徳をもって人々の信頼を得る王道を歩むのか。経済だけでなく人権問題の解決や多国間協調など中国が抱える課題は山積する。
 ナショナリズムを鼓舞する内向きの演説よりも、大国としての責任をどう果たすのか国際社会に発信すべきだ。
 習氏は演説で「有益な提案や善意の批判は歓迎するが、偉そうな態度の説教は絶対に受け入れられない」として、諸外国からの批判を受け付けない姿勢を印象付けた。
 だが中国に対する批判は「偉そうな説教」ではない。香港で起きている事態を強引に正当化する中国共産党こそが、自由な意思表明を保障するという世界共通の価値観に目を背けているのだ。
 祝賀大会と同じ日に英国からの返還24年を迎えた香港では、毎年恒例の大規模デモが禁止された。市民を監視するため警察官1万人を動員する異例の態勢を敷いた。
 香港では国家安全維持法により、民主活動家らが公の場から排除された。提案や批判を力で抑え付ける姿は大国の振る舞いとはいえない。
 香港返還に当たり、中国は一国二制度による高度な自治を国際社会に約束したはずだ。それをほごにしながら「われわれをいじめ、抑圧し、奴隷にしようとする外部勢力」(習氏演説)などと自らが弱者であるかのような態度を取るのは許されない。
 演説では台湾統一を歴史的任務と位置付け「いかなる『台湾独立』のたくらみも断固として粉砕する」と強調した。平和的な統一を掲げたものの、同じ演説の中では軍事力の増強もうたっている。
 仮に中国、台湾が衝突すれば、隣国の日本、さらには国境を接する沖縄にとって対岸の火事ではない。現在でも尖閣諸島周辺で中国の挑発的な行動が繰り返されている。
 東アジアの平和を維持するには、力を誇示するのではなく周辺国との対話や協調が求められる。中国が独善的な道を歩まないよう日本も平和的外交を働き掛けるべきだ。
 19世紀、欧米列強の侵略にさらされた中国が苦難を乗り越え、現在の地位を獲得するまでに要した努力には敬意を表する。ただ栄光のみを強調するのではなく負の歴史を省みることも必要ではないか。
 伝統を破壊した文化大革命を全否定する1981年の「歴史決議」は80周年、90周年の演説で言及があったが、今回の習氏の演説では一切触れられなかった。
 民主化要求を弾圧した天安門事件の記憶は消えることはない。大国の矜持(きょうじ)を示すためにも同じ過ちを繰り返さない決意を発信してもらいたい。