<社説>緊急事態発令・延長 臨時国会を召集すべきだ


社会
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 政府は東京都に4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言を発令し、沖縄県の緊急事態宣言を来月22日まで延長する方針を固めた。

 野党がコロナ対応ができるよう国会の会期延長を求めたが与党は受け入れず閉会した。政治の責任は重い。早急に臨時国会を召集して、コロナの抜本的対策や補正予算編成など徹底的に議論すべきだ。
 東京都は7日、新型コロナウイルスの感染者が新たに920人報告されたと発表した。京都大のチームは7~9月の東京の感染状況を予測。7月半ばに1日当たりの感染者数が千人を超え、緊急事態宣言などの強い対策を取らなければ月末に2千人に達する恐れがあるとした。
 これまで政府は緊急事態宣言の発令と解除を繰り返した。1月の発令が遅れたのは、政府が「GoToキャンペーン」にこだわったからとも言われる。3月の全面解除は「早過ぎる」との声を聞き入れようとせず第4波を招いた。3度目の緊急事態宣言もデルタ株の影響が懸念される中で解除し、今回の再宣言となった。専門家の意見を重く受け止めない政権の姿勢が、事態の鎮静化を遅らせている。
 果たして23日に開会式を迎える東京五輪は感染拡大に影響しないのか。政府は国民に説明する責任がある。
 一方、なぜ沖縄県は宣言が延長されるのか。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織によると、沖縄の新規感染者数は減少が続いているが、高い水準で推移していると分析している。
 来月22日までの延長となると、観光シーズンの真っただ中と重なる。観光業はじめ関連産業への経済的打撃は計り知れない。飲食や社交業関係者を中心に「自粛要請が続けば経営が持たない店が増える」などの声が上がっている。休業や時短営業などで厳しい経営を強いられる県内事業者が再起できるよう、政府はこれまで以上に手厚い支援をしなければならない。
 宣言期間中は夏休みを迎える。昨年5月までの緊急事態宣言下の影響について、沖縄大学などが実施した調査によると、学習意欲の低下など学習面に関わることが最も多く、精神的に不安定な生徒が出たケースも多数に上った。外出自粛が長期化し、外部との交流の機会が減って孤立する子どもがいることを忘れてはならない。
 仕事を休めない保護者が多いため、学童や子どもの居場所などでは、子どもを受け入れざるを得ない。職員の受け入れ態勢や感染対策に悩む団体は少なくない。食料の提供や学習支援などの取り組みが大切になる。
 感染の抑え込みにつなげるには、政府や県、関係団体が一体となった抜本策が不可欠だ。中でも空港や港湾での水際対策は待ったなしだ。航空便搭乗前のPCR検査の徹底や陰性証明の導入など対策を強化すべきだ。