<社説>那覇市議選野党躍進 基盤揺らぐ「オール沖縄」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 11日投開票の那覇市議選で、城間幹子那覇市長を支持する市政与党は現有より1議席減らした。一方の野党は5議席を増やし、躍進した。

 県都・那覇の市議会与野党構成は、県内の政治勢力の優劣を測る指標となる。今回の選挙は、秋の衆院選、特に那覇市を含む沖縄1区の情勢に与える影響は大きい。天王山に位置付けられる来年の知事選の行方を占う意味でも重要だ。このため各党・各派は前哨戦として、しのぎを削った。
 城間市長や支持勢力は名護市辺野古の新基地建設反対を一致点に結集する「オール沖縄」勢力の一角だ。「オール沖縄」にとって今回の結果は今後の選挙に向け、厳しいかじ取りが迫られる。一方、躍進した野党の自民・公明勢力にとっては弾みとなった。
 「オール沖縄」を率いる玉城デニー知事は選挙後、記者団に対し野党の躍進について野党系候補者数が多かったことを一因に挙げた。ただ「オール沖縄」勢力は候補者数に占める当選の割合も野党に劣る。現有議席を一つ減らした結果を真摯に受け止めるべきだ。次期衆院選に向けては、沖縄1区現職で共産党の赤嶺政賢氏を支援する同党の現職2人を落としたのは痛手だ。支持基盤が揺らぎかねない。
 議席を増やした自公勢力にも課題がある。沖縄1区では、自民党の現職国場幸之助氏と無所属現職の下地幹郎氏による保守分裂選挙になる可能性がある。下地氏側は自民党への復党を目指しているが、めどは立っていない。今回、下地氏が支援した立候補者5人のうち3人が当選し一定の勢力を保った。保守系同士の候補者調整の可否が情勢を左右しそうだ。
 市議選では20~40代の比較的若い候補が目立った。しかし投票率は50%を切り、46.4%と過去最低を更新した。新型コロナ感染症防止のための行動自粛が響いた面もあるだろう。ただ市長選や知事選、県議選などの各種選挙でも那覇市の投票率は軒並み下がり続け、低下に歯止めが掛からない。背景に政治不信があるとみられる。その払拭(ふっしょく)は与野党共通の大きな課題だ。
 一方、定数40のうち女性議員が9人から13人に増え、3割を超えたことは大きい。しかし社会の男女構成比と照らすとまだ少ない。男性議員も一緒になって男女平等社会の実現に取り組んでほしい。
 早稲田大マニフェスト研究所による2018年度議会改革調査で、回答した全国1447議会のうち那覇市議会は県内過去最高位の20位だった。情報公開や傍聴のしやすさ、議会基本条例制定などが評価された。当選した市議らはさらなる改革に挑み、市民の政治参加を促してほしい。
 秋の衆院選から来年にかけて注目選挙が続く。コロナ禍の出口が見えない中、有権者は、選挙での選択は私たちの暮らしや経済に直結することを再認識し、政治の場に意思を反映させたい。