<社説>県内コロナ急増 実効性ある対策を急げ


社会
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 4日連続で新規感染者が300人を超え、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。県は大規模施設への休業要請など規制を強め、政府も緊急事態宣言を8月31日まで延長する。

 海外からの人流を呼び込む東京五輪の開催や、度重なる緊急事態発令で国民に「コロナ慣れ」「自粛疲れ」(尾身茂政府対策分科会会長)があるとの指摘も出ている。
 医療逼迫(ひっぱく)が現実味を帯びる中、宣言を繰り返して国民に協力を求める手法は限界にある。国や県は実効性ある対策を急ぎ講じるべきだ。
 旧盆需要を控え、観光シーズンを迎えるはずだった経済界にとって、8月いっぱいとなる宣言延長は到底納得できるものではない。
 沖縄向け航空便への搭乗客に対するPCR検査は希望者だけである。本当に水際対策は万全なのか。夜の繁華街にあふれる若者たちを誰がどう規制するのか。
 「(休業の必要性について)科学的な根拠と実効性のある対策」(糸数剛一リウボウインダストリー会長)を示すよう求めるのは当然のことだ。
 沖縄と同様、緊急事態宣言が続く東京都でも今週になって連日、新規感染者数が過去最多を記録している。
 国内2カ所しかない緊急事態宣言地域で爆発的な拡大を招いたのは、対策自体に欠陥があった証しではないか。
 県は医療従事者を緊急募集するが、感染を抑え込まなければ人材や病床などの医療資源はいくらあっても不足だ。
 現時点で効果が期待できるのはワクチン接種の推進だ。玉城デニー知事もワクチン接種の加速を明言した。しかし高齢者への接種は進んでいるものの、感染が広がる若年層への接種は遅れている。
 県の27日時点でのまとめによると、65歳以上の高齢者への接種は1回目が80・88%、2回目が65・19%となっている。一方で全年代は1回目26・15%、2回目16・38%と大きな差がある。
 全国も傾向は同じだ。若い世代の接種率が低い要因は特定できないが、一つだけ言えるのはワクチンの供給量不足が背景にあることだ。
 厚生労働省のまとめで5~6月にかけて2週ごとに1万6千箱のファイザー製ワクチンが全国の自治体に配布された。だが8月以降の見通しは1万箱に減っている。自治体への配布のペースは確実に落ちているのだ。
 ワクチンは2回の接種が前提であり、1回目を確保できただけでは意味がない。
 県市長会が供給減少で接種計画が立てられないとして、政府に十分な供給を要請するのは当然である。
 同時に福岡市のように24時間接種できる態勢づくりなど、県内の自治体にもさらなる努力が必要とされている。
 国民の協力頼みでコロナ禍を乗り越えることは無理だ。ワクチンをはじめとする確実な対策こそが行政の役割だ。