<社説>敗戦76年 戦争防ぐ国へ政策転換を


社会
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 アジア・太平洋戦争が終結してから76年を迎えた。アジア諸国で2千万人以上が犠牲になった。戦没者に哀悼の意を表し、不戦を誓い、日本は戦争とどう向き合うべきかを改めて問う日としたい。

 世界では冷戦崩壊後、米中対立を中心にした新冷戦と言われる緊張が再び起きている。日本は軍拡を進めるなどして緊張を高めるのではなく、紛争や戦争の火種を取り除く平和外交を展開し、和らげる役割を果たすべきだ。世界の平和への懸け橋になることこそが平和憲法の理念にかない、戦没者への最大の追悼である。
 今年は1941年のアジア・太平洋戦争開戦から80年の節目の年だ。日本は米国の強大な戦力を事前に知り、勝つ見込みがないと分かりながら無謀な戦争へと突き進んだ。
 当時の政権内部では戦争の目的すら定まらない議論に終始し、軍部の暴走を止められなかった。国民に正しい情報を届けず、政府の意にそぐわない思想や言論を弾圧した。文民が統制できないまま、言論機関も一緒になり戦意をあおって立ち止まることをしなかった結果、多大な犠牲を生み出してしまった。その教訓や反省を忘れてはならない。
 しかし現在の日本はどうだろう。戦争ができる国に変わろうとしているかのようだ。
政権を担う自民党は、自衛隊の存在を明記した憲法改正を目指している。自衛隊の明記は、平和憲法の根幹である9条を事実上、死文化させる恐れがある。憲法学者から違憲との指摘がある集団的自衛権行使を可能にし、日米の軍事一体化を進める安全保障法制も成立させた。国民を戦争や紛争に巻き込む危険を増大させる政策だ。
 現在の菅政権は、安倍前政権が進めてきたこれらの政策を踏襲している。米中対立など新冷戦を終結に導く外交政策に取り組むどころか、米国との軍事的一体化を図り、米国の戦争に巻き込まれる恐れのある政策に前のめりだ。米国には、沖縄はじめ日本列島に核弾頭が搭載可能な新型ミサイルを配備する計画もある。軍備増強は決して平和憲法がうたう日本のあるべき姿ではない。
 改正国民投票法や土地規制法など重要法案は熟議なく数の力で可決していく現在の国会の在りようも戦前の翼賛政治をほうふつとさせる。
 東アジアでさらに緊張が高まり、いざ有事になれば、真っ先に標的にされるのは、米軍や自衛隊の基地が集中する沖縄だ。「抑止力維持」を理由に県民の民意を無視して辺野古新基地建設を進める政府のやり方は、国体護持の名の下で多くの国民を犠牲にした戦前の日本と重なる。
 政府は日本が戦争に至った迷走の歴史から学び、いったん立ち止まる必要がある。軍事力に頼らず、人権侵害、難民、飢餓、貧困、抑圧のない「積極的平和」の実現に貢献する政策に転換すべきだ。