<社説>ニュース女子名誉毀損 ヘイト根絶の出発点に

 悪意に満ちた誹謗(ひぼう)や事実に基づかない中傷がテレビや書籍、ネット空間にあふれている。こうした言説を認めない画期的な判決が下された。

 ヘイトスピーチ反対団体共同代表の辛淑玉氏が、テレビ番組制作会社のDHCテレビジョンを訴えた裁判で、東京地裁は辛氏への名誉毀損(きそん)を認め、550万円の支払いと同社ウェブサイトへの謝罪文掲載を命じた。
 名誉毀損裁判では異例ともいえる高額の賠償と謝罪文掲載命令からは「ヘイトスピーチを許さない」という司法の強い意志を感じ取れる。だがDHC側は「不当判決」と主張するなど解決にはまだ時間を要する。今回の判決をヘイトスピーチ根絶の出発点とすべく、国、県などの行政機関は法的整備を含め対策を進めるべきだ。
 辛氏が訴えた裁判では、DHCテレビジョンが制作した「ニュース女子」の問題が幾つも指摘された。番組では東村高江のヘリパッド建設に反対する住民運動を取り上げ、辛氏を「過激な犯罪行為を繰り返す基地反対運動の黒幕」と名指しし、高江住民らを「テロリスト」扱いした。
 いずれも事実に基づかないデマである。判決は「根拠として薄弱」「裏付け取材をしていない」などと指摘し、「真実相当性」がないと認めた。
 裁判に先行して放送倫理・番組向上機構(BPO)は、辛氏の申し立てを受け、重大な倫理違反や辛氏への人権侵害を認定していた。番組の悪質さが司法によって改めて確認されたといえる。
 裁判の争点で沖縄にとっても重要な点がある。一つは韓国籍の辛氏、つまり差別者が「日本人」と認めない少数派に対する悪意、二つ目は沖縄の基地反対運動への悪意だ。
 いずれも沖縄県民にとって直接的に降りかかる。機動隊による「土人発言」や警察、海上保安庁職員による過剰な圧力など辺野古での実態を見れば明らかだ。
 それを助長するのがネットでの一般市民の偏見や、DHCテレビジョン制作の番組に出演する著名人らの言動にあることは疑う余地がない。
 差別は沖縄だけでなくどこで誰に向かうか分からない。だからこそ「本邦外出身者」への差別を認めないヘイトスピーチ解消法は、衆参両院の付帯決議にあるように全ての人への差別を認めないことを条文に明記する必要がある。
 一方でDHCテレビジョンの親会社である化粧品販売大手DHCの吉田嘉明会長が繰り返し、自社ホームページに朝鮮半島出身者への悪意と偏見に満ちた文章を掲載している。ネットでは同調する意見もあり、問題の根は深い。
 指摘せねばならないのはヘイトスピーチは犯罪にエスカレートするということだ。実際に朝鮮総連への銃撃事件もあった。法的整備は当然として、犯罪に発展する前に差別を取り除く自浄作用が社会に残っていることを期待する。



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