<社説>IR汚職に実刑判決 秋元議員は即刻辞職せよ


社会
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 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で、衆院議員秋元司被告に東京地裁は懲役4年を言い渡した。秋元議員は判決を不服として控訴したが、判決を重く受け止め、直ちに議員辞職すべきだ。

 安倍前政権はIR事業を「観光立国」の目玉と位置付けていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行で海外企業が相次いで撤退、有力な候補地だった横浜市は誘致を取りやめる。「経済の起爆剤」と事業を推進してきた菅義偉首相は退陣する。政府は汚職の温床となったIR事業を見直すべきだ。
 起訴状によると、秋元議員はIR事業参入を目指した中国企業「500ドットコム」側から、現金や旅費など計758万円相当の賄賂を受け取ったとしている。
 判決は、現金を渡したとする贈賄側や、証人等買収の共謀を認めた知人らの供述を「十分信用できる」と判断した。買収は秋元議員が主導したと認定。その上で「至れり尽くせりの接待を受け、特定の企業と癒着した。公人としての倫理観はおろか、最低限の順法精神すら欠如している」と強く非難した。「収賄に限らず証人買収という前代未聞の司法妨害に及び、長期の実刑は免れない」と断じた。
 国際観光産業振興議員連盟に所属していた秋元議員は、2017~18年にIR事業を担当する内閣府副大臣を務め、日本でのIR事業推進を積極的に発信していた。17年8月に500ドットコムが主催して那覇市内で開いたシンポジウムで基調講演し「米軍基地返還後の土地をIRで開発すると、地元経済を考えても高いポテンシャルを持っている」と提起していた。
 そもそも日本にカジノは必要なのか。IR整備法は18年、野党が猛反発する中、安倍政権が強引に採決へ持ち込んで成立させた。
 この法律は事業者に対し利用客への金銭貸し付けを認めている。国会審議で「大半のカジノ客は日本人。過剰貸し付けを招く仕組みは依存症を助長する」と糾弾された。日本は世界有数の「ギャンブル大国」である。生涯でギャンブル依存症の経験が疑われる人は人口の推計3・6%との結果が、厚生労働省の調査で明らかになっている。ギャンブル依存症は単なるギャンブル好きとは違う。世界保健機関(WHO)が定める、れっきとした精神疾患である。
 運営企業に選ばれれば巨大な利益が見込まれ、海外企業は、未開拓市場である日本に熱い視線を注いできた。そうした企業が事業推進に関わる政治家に近づくことは容易に予想された。実際に秋元議員のように、現職の国会議員が贈収賄事件で実刑判決を受ける異例の事態となった。
 刑法が禁じる賭博を合法化し事業を推進した安倍・菅政権の責任は重い。「政治とカネ」の問題は国会および衆院選で厳しく問われるべきだ。