<社説>緊急事態宣言延長 医療体制確保に全力を


社会
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 政府は、新型コロナウイルス感染症対策として沖縄など19都道府県の緊急事態宣言期限を今月末まで延長した。沖縄は5月23日以来、延長を繰り返し、4カ月以上に及ぶ宣言適用となる。今度こそ、最後の延長となるよう感染防止に力を入れたい。

 感染者数は全国、沖縄ともに減少傾向にある。しかし沖縄はじめ宣言適用地域では医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻で、早急な対策が必要だ。他の病気で治療や入院が必要な患者への処置にも支障を来している。
 一方、感染は若年層で拡大傾向にある。このため県は予約不要なワクチン接種会場を設けるなど若年層対策に力を入れている。政府や県はワクチンについて正しい情報を発信し接種を進めるなど若年者の感染対策を強化するとともに、逼迫している医療体制の確保に全力を挙げるべきだ。
 感染状況がなかなか収束しない背景には、従来株より感染力が強いデルタ株への置き換えが進んだことがある。その一方で人流が抑えきれず宣言の効果を弱めている現状がある。自粛疲れもあるだろう。問題なのは、人々のそんな心理に「気の緩み」を与えてしまう政治が追い打ちを掛けていることだ。東京五輪・パラリンピック開催への心理的影響が指摘されたが、その教訓は生かされていないようだ。
 政府は飲食店の酒類提供容認など行動規制緩和の基本方針を決めた。希望者のワクチン接種が完了する11月ごろをめどに実施するという。
 感染者数が劇的に減り、医療体制が安定している状態なら理解できるが、まだその状況は見えていない。現段階で緩和策を示せば「第5波のピークは過ぎたので大丈夫」というメッセージに受け止められる恐れがある。全国知事会が「緩和のみが目立ち、国民を楽観させることは不適切だ」と懸念を示したように、気の緩みにつながらないか。
 また麻生太郎副総理兼財務相は「(コロナは)曲がりなりに収束して、国際社会での評価は極めて高い」と発言した。コロナは収束したという国民への誤ったメッセージになりかねない。医療の危機を直視しているとは思えない発言だ。認識が甘すぎる。
 デルタ株流行以後、若い世代を含めた幅広い年代で重症化する事例が相次いでいるほか、ワクチン接種を終えた人の感染例もある。国民の命や健康の危機は続いており、油断は許されない。
 そんな中、国の政権を担う自民党は衆院選をにらんだ総裁選に躍起だ。最優先すべきはコロナ対策である。政治空白を生んではいけない。野党が求めている臨時国会召集に応じ、効果的なコロナ対策を早急に議論すべきだ。
 退陣表明した菅義偉首相はコロナ対策について「医療体制をなかなか確保できなかったのは大きな反省点」と述べた。反省している場合ではない。一刻も早く確保への手だてを打つ必要がある。