<社説>乳児虐待死報告書 立体的な支援網構築を

 2015年と16年に宜野湾市で起きた二つの乳児虐待死事件について、有識者からなる県社会福祉審議会の審査部会が検証報告をまとめた。

 課題として、面前ドメスティックバイオレンス(DV)による児童虐待の視点の欠如、組織間の情報共有や連携の不足などを指摘した。
 社会や家族のあり方が多様化する中、支援体制にほころびがないか。再発防止に向けて組織間の情報共有を密にして立体的な支援網を構築してもらいたい。同時に虐待の危険性を出産前の母親に周知させることも大切だ。
 検証報告書によると、15年の事件は2カ月の女児が、母親から頭や顔を拳で数回殴られる暴行を受け、外傷性脳浮腫のため死亡した。母親は女児の父親から暴言や身体的DVに加え、生活苦に陥る経済的DVも受けていた。
 16年の事件は、5カ月の男児が母親の交際男性から頭部に衝撃を加えられて心肺停止となり、3週間後に死亡した。事件発生時、母親は夜間に働きに出て不在だった。
 2事件とも何らかの形でそれぞれ地元自治体とつながっていた。報告書は市や児童相談所に危機意識が欠け、組織的な対応の不備があったと指摘した。
 市町村や児童相談所などは人手不足など、さまざまな課題に直面するが、被害者のSOSを見過ごす言い訳には当然ならない。
 児童虐待の通報件数は右肩上がりだ。一次情報から迅速に共有し、早い段階から支援の網(セーフティーネット)にかかることをあらためて確認するべきだ。そのため職員の資質向上など、危機察知機能の横断的な底上げも重要となる。
 DVや虐待を巡っては周囲の目から逃れるため、加害者が被害者を連れて転居することがある。全国規模で相談事案を把握することは有効だ。
 現在、虐待に関する情報を閲覧できるシステム構築が全国各地の自治体で進み、国も全国統一のシステムの運用を始める。警察庁も、全国を網羅する虐待情報の共有システムの運用を目指している。関係機関との連携を深めることで、立体的なセーフティーネットが構築できるだろう。
 県内の関係機関はこれらシステムの活用や運用を待つだけでなく、積極的に要保護児童へ働き掛けていくべきだ。
 一方、組織対応だけでなく、養育者に対する取り組みも大切だ。赤ちゃんが泣きやまないことに腹を立て、激しく揺さぶったり口をふさいだりする行為は、脳に深刻なダメージを与え、死に至らせることがある。
 東京医科歯科大と東京工業大の共同研究によると、その危険性を解説し、「泣き」への対処法を教える動画を産後間もない母親に視聴させると、虐待行為が半減したという。出産前の母親や全ての養育者に大切な情報を共有してもらう工夫も必要だろう。



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