<社説>飲酒18歳熱中症死亡 危険性と防止策浸透を


社会
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 本島南部で今年7月、未成年者らが飲酒し、このうち18歳の少年1人が車に残された後、熱中症のため死亡した。

 未成年者の集団飲酒補導件数は前年に比べ急増している。温暖化に伴い平均気温は上昇し、熱中症のリスクは高まっている。アルコールと熱中症の危険性が合わさり、最悪の結末となってしまった。
 危険性や身を守る知識を浸透させ、防ぐことが必要だ。兆候も見逃してはならない。
 7月10日夜、未成年者約10人が南部の海岸で飲酒した。亡くなった少年はアルコールの影響で体調を崩した。集団の一部と翌朝まで行動し、車内で横になった。車は午前10時ごろに駐車され、少年を車内に残したまま窓は閉められ、エンジンを切られた。
 周囲が少年の異変に気付いたのは午後4時を過ぎていた。司法解剖による死亡時刻は「昼頃」。この日の気温は30度を超え真夏日だった。
 日本自動車連盟(JAF)によると、実験では、気温35度の炎天下で窓を閉めてエンジンを切ると、25度だった車内温度は約15分で命に危険が生じる暑さになり、30分弱で40度を超す。
 7月には福岡県の保育園のバスに残された園児が熱中症で亡くなった。8月には沖縄県で40代男性も車内で亡くなった。年齢を問わず誰もが熱中症になる危険性がある。
 9月上旬には県内の畑で80代男性が熱中症のため死亡した。今年4月26日から9月12日まで、県内の熱中症による死者は4人、搬送された人は702人。長期入院が必要な重症者は26人に上る。
 少年が死亡した今回の事案で、アルコールの影響は否定できない。アルコール健康医学協会によると、アルコールによる酩酊期は吐き気を覚え、泥酔期は意識がはっきりせず、昏睡期は脳全体がまひし最悪死に至るとある。
 度を超えた飲酒は判断力を鈍らせる。自身だけでなく、身近にいる大切な人の危険を察知できず、対応に遅れを生じさせる恐れもある。
 未成年の飲酒は論外で、販売した側も罰せられるなど違法行為だ。しかし、県警によると、未成年が3人以上で酒を飲んだ、県内の集団飲酒の補導件数は1~8月で48件に上り昨年同期比の19件よりも増え、2・5倍となった。
 未成年がアルコールを入手しやすい環境が生じていないか。子どもにアルコールを売らない、買わせないなど、大人も律することが重要だ。
 熱中症についても、リスクが特に高まった際に注意を促す「熱中症警戒アラート」の全国運用が4月から始まった。通信アプリLINE(ライン)などを通じて入手でき、対策手段を知る方法は身近にある。
 アルコールと熱中症について、そのリスクや命の危機の兆候、救急措置などについて、関係機関はより効果的に周知し、浸透させる方法を一層模索するべきである。