<社説>生理の貧困調査 女性の不平等解消しよう


社会
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 「生理の貧困」の言葉を聞くようになったと感じる人は多いのではないだろうか。経済的な理由や家庭事情などでナプキンなどの生理用品を十分に買えない問題を指す。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用悪化で生活の維持が難しくなる中で、女性にとって生活に欠かせない生理用品の購入にさえ支障が出る状況が可視化されるようになった。支援を必要とする人を孤立させず悩みを共有すると同時に、政策の意思決定の場に女性がいない構造的問題を克服していく必要がある。
 生理をタブー視する風潮のために多くは個人の事情として抱え込み、女性に毎月の周期で訪れる身体の不調や支出の負担が社会全体の問題として認知されてこなかった。
 琉球新報が7月にウェブでアンケートを実施したところ、回答があった1117件のうち102人が、過去1年間で生理用品が入手できず困ったという経験をしていた。10~20代が8割を占め、不快な思いをしながら同じ生理用品を使い続けたり、購入できず学校を早退、欠席したりした経験が寄せられている。
 経済的な理由だけでなく、ネグレクト(育児放棄)や親との不仲などさまざまな要因も関わっている。父子家庭で相談できる人がなく、十分な知識や情報が得られない事例も少なくない。学校での性教育やサポートは重要だ。
 社会に出た後も、女性というだけで困窮に陥りやすい実態がある。
 国税庁の調査によると、男性は年齢に従って平均給与も上がり、55~59歳で686万円となる。これに対し女性の平均給与は25~29歳の328万円でピークに達してしまう。結婚や出産、介護などでキャリアが途切れやすく、再就職も難しい。非正規雇用の割合が高いなど、生涯にわたり給与が低いままとなる。
 生涯賃金にこれだけの開きがあるのは、性別による差別と言うしかない。収入の低さのせいで、女性特有の生理に関する支出も含めた経済的な負担は女性ほど重くなる。
 内閣府によると7月時点で国内581の自治体が、生理用品の無料配布などの支援策を講じている。県内でも県と11市町が防災備蓄や寄付により配布を実施している。小中高校や公共施設のトイレに生理用品が備え付けられ、気兼ねなく利用できる環境を当たり前のものにしたい。
 食料品の軽減税率と同様に、生活必需品の生理用品にも課税免除があるべきだ。
 根本的な解決には、性別による経済格差や不平等をなくす社会の変革が必要だ。各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は156カ国中120位と最低レベルだ。生理の貧困は政治の貧困と認識すべきだ。
 まずは「育児や家事、介護は女性」という性別役割分担を改める。女性の視点を政策に反映させ、必要な施策をしっかり届けていくことだ。