<社説>安保法成立から6年 憲法違反、容認できず


社会
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 安全保障関連法の成立から6年を迎えた。日本への武力行使がない段階で、集団的自衛権を行使するという憲法違反の内容を含む。憲法の平和の原則を骨抜きにする安保法は決して認められないことを再確認したい。

 安保法は、密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合を「存立危機事態」と定義し、他に適当な手段がないなどの要件を満たせば、集団的自衛権を行使できると定めた。
 米中対立の激化や台湾海峡情勢の緊迫化で、米国は中国による台湾侵攻への危機感を強めている。4月の日米首脳会談の共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言が盛り込まれた。
 森本敏元防衛相は「台湾に中国軍が駐留すると、日本の南西諸島が最前線となり在日米軍も直接の脅威下にさらされ」ると指摘する。
 麻生太郎副総理兼財務相は7月、中国が台湾に侵攻した場合、集団的自衛権行使を可能とする安保法の「存立危機事態」として対処すべきだとの見解を示した。さらに「(台湾有事の)次は沖縄。そういうことを真剣に考えないといけない」と強調した。
 「存立危機事態」という言葉を持ち出し危機をあおる政治家の頭に、沖縄の住民の生命や安全という視点があるのだろうか。大いに疑問である。
 そもそも安保法案を審議した2015年6月の衆院憲法審査会で、参考人の憲法学専門家3人全員が「憲法違反」と表明した。多くの憲法学者が「憲法9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の体制を根底から覆す」として廃案を求めた。だが、安倍晋三前首相は専門家の指摘に耳を傾けなかった。
 それだけでなく、集団的自衛権の行使を可能にするため「憲法の番人」と呼ばれる内閣法制局長官を、自身と考えが近い人物にすげ替えて法案を成立させた。
 自民党総裁選で、安倍氏が支持する高市早苗前総務相は、電磁パルス(EMP)を使い、敵部隊の活動を妨害する「敵基地攻撃能力」導入を主張する。敵基地攻撃能力は、憲法の原則である専守防衛を逸脱する。EMP攻撃は高高度で核爆発を起こして地上の電子機器を破壊する。国是である非核三原則に抵触する。岸田文雄前政調会長も、敵基地攻撃能力の保有を「有力な選択肢」と位置付け強硬論に傾く。
 安倍前政権が安保法を成立させて以来、立憲主義や法治主義がゆがめられている。抑止力という言葉が独り歩きして、日本が戦後国際社会に約束した平和主義が形骸化していくことを憂慮する。なぜ外交力を磨かないのか。
 76年前、日本の戦争準備が整うまでの「捨て石」となった沖縄戦で、県民の4人に1人が犠牲になった。沖縄が再び戦場になることを拒否する。