<社説>コロナ禍で県が借金 国は実情に適した支援を


社会
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 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が長引いているために、県が8月に金融機関から約222億円を一時借り入れして立て替えていたことが明らかになった。4~5月の出納整理期間以降の8月に一時借入金が発生するのは異例で、異常事態と言える。

 事業者への協力金の需要に対し、その主な財源として国から県へ交付される地方創生臨時交付金の交付ペースが追い付かなくなったことが要因だ。国からの国庫支出金で9月に返済したが、長引くコロナ禍が県財政を圧迫している実態が浮き彫りになった。
 沖縄は人口10万人当たりの感染者数が全国最悪の状況が続き、コロナ対策による打撃が観光業や飲食業など幅広い業界で深刻だ。それに伴い県税収も激減し、県財政が縮小する構図が続く。国は沖縄県のこうした実情に適した財政支援を迅速に実施すべきだ。
 沖縄は昨年から緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返されてきた。さらに今年5月の宣言発令から今月23日で4カ月となった。本来なら稼ぎ時の観光シーズンをコロナ禍が丸のみした形だ。深刻な感染状況が長引くに伴い、事業者支援に膨大な資金が必要な状態が続いている。
 その中で機動的財政需要に対応できない事態が起きている。県はこの2年間、コロナ対策費捻出のために借金に当たる県債を大量発行し、貯金に当たる「財政調整基金」を大幅に取り崩した。2021年度末は感染症の影響がなかった19年度末比で約223億4千万円(97.6%)減の約5億6千万円になる見通しだ。
 協力金などコロナ対策費の財源の大半は国から補助されるが、「裏負担」と呼ばれる県の自己負担も積み重なっている。県庁内では、一時借入金が突発的に増え、全ての公金の支出がストップする最悪の事態「債務不履行」を回避する方策まで検討し始めている。
 国の支援は十分とは言えない。全国知事会は先月、緊急提言で、協力金の支給時期と臨時交付金の交付時期とのずれにより、一時借入に伴う利払いを余儀なくされている現状を指摘した。その上で、4兆円の予備費を活用した臨時交付金のさらなる増額と速やかな交付を求めた。
 玉城デニー知事も、機動的に予算配分が受けられるよう感染状況が厳しい地域を対象に新たな予算の枠組みを創設することを国に求めている。
 未曽有の国難と言われるコロナ禍にある中、国は自治体の健全な財政運営を維持する責務がある。自治体の財源が乏しければコロナ対策はままならず、住民サービスの低下も懸念される。感染者が減少傾向にある今が正念場だ。今後の感染拡大防止には事業者の協力が不可欠である。協力に見合う資金を迅速に支払えるよう国は一刻も早く自治体の要求に応えるべきだ。
 そのためにも国はコロナ対策を議論するための臨時国会を早急に召集するべきだ。